ソフトバンク担当記者による随時連載「期待しタカ~」は今年も3度に分けて掲載します。1人目は東浜巨投手(33)です。昨季はノーヒットノーランを達成するなど2桁10勝を挙げながら、今季は6勝止まり。最多勝を獲得した経験もある悩めるエース候補が、完全復活に向けて語った覚悟に迫ります。

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プロ12年目となる2024年シーズンに向け、ソフトバンク東浜巨投手(33)は完全復活を誓っている。20日に現状維持の年俸1億5000万円で契約更改を終えた。東浜に笑顔はなかった。「1つも数字を残せていない。自分の成績がチームに直結しているし、自分がしっかりしていれば順位も上がった。力になれなかったシーズンだった」。口元を引き締め、厳しい表情で1年を振り返った。昨年オフに球団と3年契約を結んだ。複数年契約に甘んじたつもりはない。先発陣をけん引する存在として、チームの勝利にしっかり貢献したかった。

何ともやり切れない表情で機内に乗り込む後ろ姿が印象深い。9月19日。新千歳空港から仙台に向かうチームとは別便で東浜は福岡に戻った。前日(18日)は先発予定も体調不良により登板回避。チームは3連敗を止めたものの、オリックスも勝ち、チームのV逸が確定。屈辱の「終戦」となってしまった。その後も東浜のコンディションは回復せず、実戦復帰することなくシーズンを終えた。「ふがいない成績でチームに貢献できなかった。コンディショニングが大事。来年は小久保監督を胴上げできるように力になりたい」。通算69勝を挙げている右腕も来シーズンの先発ローテ入りが確約されたわけではない。小久保監督が今オフに先発ローテ入りとして名前を挙げたのはベテラン和田と10勝をマークした有原の2人だけ。「ローテの一角を勝ち取るように頑張りたい。1からのスタート」と言って東浜は背筋を伸ばした。

一昨年は西武戦でノーヒットノーランを達成。球史に名を残した右腕だが、そんなプライドも過去の出来事と割り切っている。「先発ローテ入りはゴールではなく、そこがスタート」。すでに来季へのトレーニングは始動。年明け早々には福岡・筑後市のファーム施設などで本格的に自主トレで体をいじめ抜く。雪辱のシーズンを誓って東浜に「妥協」はない。【佐竹英治】