日刊スポーツ阪神担当は今回の春季キャンプで「密着」と題し、ナインらの取り組みを随時取り上げる。第3回は波部俊之介記者が、大竹耕太郎投手(28)の独自の練習法に迫った。

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一通り投手陣が投げ終えた静かなブルペンに、大竹は現れた。午後1時10分。平均台のような道具を用意し、マウンドに設置。無人のネットに向かって投球。少しでも踏み出す足がずれると落ちてしまう。

「できるだけ狭い所を通る感覚が大事。普通の地面だったら、どこでも(足が)付けるので。できるだけ狭い所を通していくような感覚で投げたいというか。そういう意識づけです」

他にも踏み台を使っての投球も実施。さまざまな目的があるというが、股関節の使い方や腕を振るタイミングなどが矯正されるという。どちらの練習も、強制力を働かせて修正を行うことができる。「そうしないと投げられない環境をつくって。その上で投げたら勝手にそうなるっていうような環境要因をつくっています」。それぞれ、ソフトバンク入団1年目の際に久保康生2軍投手コーチ(現巨人巡回投手コーチ)に教わった練習法。この反復練習は1時間に及んだことも珍しくなかった。

他にも足裏の感覚を研ぎ澄ます、はだしでの練習。体をうまく使うためのソフトボールを使った投球など、他の投手には見られない練習が大竹からは多々散見される。特殊なトレーニングにも見えるが、左腕に特別な意識は全くない。

「ずっと考えたんです。特殊と言われるけど、それはただ知らないだけじゃんという。勉強して学んで、それをやっているだけなので。僕からしたら、何も特殊じゃないんです」

どの練習も自ら考えて学び、蓄積した多くの引き出しの1つにすぎなかった。

1月に左肩のガングリオン(良性のしこり)を除去し、現在は慎重に調整を進めている。「珍トレ」というなかれ-。頭脳派左腕の練習法は1つ1つに大きな意味がある。【波部俊之介】

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