西武の粟津凱士投手(26)は、1月1日に結婚したばかりの新婚さんだ。

高知・春野でのB班キャンプを25日に終え、ひとまず帰京…のつもりだった。延期になった。A班、すなわち1軍に呼ばれたから。

「帰れる日がずれちゃいましたね。寂しさはありますけど、でも、やってやろうという気持ちの方が本当に強いですね」

19年に1試合だけ1軍登板の経験がある。21年4月に右肘のトミー・ジョン手術をして、育成契約の3年目を迎える。昨年はイースタン・リーグで防御率1点台の好投を続け、秋のフェニックス・リーグでは2軍では無双レベルに近い投球を繰り広げた。

ただ、とんとん拍子にはいかない。

「手術したのもあるので、春先はどうしてもヒジの怖さとか。去年はボールを投げて試合を重ねていくごとに払拭されていくというか、しっかり腕が振れるようになっていったので」

経験者にしか分からない進行具合がある。リハビリをほぼ終えていた1年前と比べれば「春先のヒジの感じはいいです」と感じている。

「やっぱりまだ怖さとかもあるので。まずは1年間しっかり投げられるように、無理はしますけど、本当に大きなケガにつながらないように、ですね」

B班で慎重に調整を進め、ようやくのゴーサイン。育成投手ではいの一番に1軍に呼ばれた。年内に5人前後の育成選手が支配下登録される可能性がある。事実を照らし合わせれば、粟津への球団からの期待が雄弁に浮かび出る。

ただもちろん、育成選手の目標は「支配下選手になる」ではなく「1軍で活躍する」だ。夢につながっていくチャンスは、決して多いわけでもない。

「ラストチャンスのつもりでやろうと思っています。(開幕まで1軍で)生き残るのが一番いいことだと思うんですけど、手術してこれだけ投げられるようになったというのをいろいろな人に見てもらって、上でしっかり投げさせてもらえるようなアピールをしていけたら」

3月1日に27歳になる。夫婦での誕生日祝いはもう少し先に。好投の笑顔を土産にしたい。【金子真仁】