<ヤクルト1-7楽天>◇28日◇神宮

 楽天美馬学投手(25)がプロ初完投勝利でチームの期待に見事に応えた。15日ぶりとなる先発登板で、ヤクルト打線を5安打1失点に封じた。前回登板の20日阪神戦では中継ぎで2勝目を挙げたが、星野仙一監督(65)は先発投手として大きな期待をかけてきた。その思いに応える美馬の快投で、チームは貯金を今季最多タイの4に増やした。

 楽天美馬はマウンドを守りきった快感を体全体で味わった。9回2死一塁。代打バレンティンが初球を簡単に打ち上げると、右手とグラブをパンとたたいて勝利を確信した。打球が遊撃阿部のグラブに収まると、もう3度たたいて喜びにひたった。113球のプロ初完投勝利。「ここまで投げられるとは思っていなかったので、すごくうれしいです」と、敵地でのヒーローインタビューで満面の笑みを浮かべた。

 元気のないヤクルト打線に最後までつけ入る隙を与えなかった。9回を散発5安打に抑え、複数安打を浴びた回はなし。唯一のピンチらしい場面は5回に失策と安打で迎えた1死一、二塁だったが、相川をカーブで右飛、代打藤本はスライダーで二飛。落ち着いて変化球を低めに集め、難なく無失点で切り抜けた。星野監督、佐藤投手コーチともに「途中からカーブが決まった」と口をそろえ、投球内容を高く評価した。

 チームが期待する先発投手としての大きな1歩だった。今季は3試合目の先発となった13日オリックス戦(京セラドーム)で初勝利。7回1失点で降板したが、打線も1点しか奪えず同点で7回裏を終えていた。8回表に3点を勝ち越して美馬に勝ちがついたが、星野監督は「点が入らなかったら続投させていた。勝ちをつけさせないとローテが回らない。勝つことで違ってくる」と振り返った。そこから自身3連勝。監督の親心に結果で応えた。

 前回の20日阪神戦はプロ初先発した釜田の後を受けて3番手で登板し、2回1/3を無失点で勝利投手となった。そしてこの日は、釜田のプロ初勝利翌日にチームの勢いを加速させた。「登板間隔も空いているし、ローテーションに入れているかは分かりませんけど…。期待されている分、これからもしっかり結果を出していきたい」。日程に余裕のある交流戦期間中は、戸村や川井も中継ぎに回るなど先発争いも厳しい。高いレベルで投手がしのぎを削る中、まもなくエース田中も帰ってくる。美馬の踏ん張りが、チームの未来を明るく照らした。【大塚仁】