【マイアミ(米フロリダ州)21日(日本時間22日)】マイアミに舞った! 栗山英樹監督(61)が日米決戦を制し、侍ジャパンをWBCでは09年以来3大会ぶりの世界一に導いた。

2回に1点先制されたが、村上の1発ですぐに同点。日系メジャーリーガー初の代表を実現させたヌートバーの内野ゴロで勝ち越すと、7投手で継投策。8回はダルビッシュ、9回は大谷を送り、栄冠を手にした。試合後には、今大会で勇退する意思を示した。大リーグ所属選手を除く侍ジャパンは、今日23日に帰国予定。

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目の前の光景は、栗山監督の想像を超えた。「野球って本当すごい。人生を表現してる。翔平が頑張ってきた形がつながった」。大谷が同僚トラウトを空振り三振に仕留め、世界一に。「去年からいろんなことは考えていた」が自身も驚く劇的なフィナーレだった。

原動力は、痛烈な“後悔”だった。

2019年1月29日。

その日付を忘れられずにいる。京セラの創業者・稲盛和夫氏に会えるはずだった。著書を読み込む人生の師。ぜひ会いたかった。日本ハム7年目の指揮を終え、ついにアポが取れた。だが前日に稲盛氏が体調を崩し、キャンセルになった。

「俺の行動が遅れたからだ。亡くなられて、もう会えない。人としてダメだしされた。『あなた、大変なこと、しましたよ。早く行動しないために、人生で一番大事なものを失いましたよ』と」

せめてもと京都の本社へ行き、周りの人に話を聞いた。それでも悔恨の情は消えない。それからだ。「やらなきゃいけないことは確実に早くやる」。WBCも、そう。「勝ち負けは分からないけど、大会までに必要と思うことは絶対にやり切る」と自分に誓った。

プロアマ問わず現場に足を運んだ。安易な道は選ばない。昨年3月の強化試合では大学生も選出。「正直言えば、無難にやっておく方が文句も言われない。だけど、それは失礼。代表監督に信任された。やる責任がある」。

「侍」に学生野球の父・飛田穂洲の言葉「無私道」を重ねる。10年間の激務からか、日本ハム監督を勇退後、心臓の手術を受けた。それでも重責を引き受けたのは“私”よりも大事なことを感じたから。2月の宮崎強化合宿集合日、選手1人1人に直筆の手紙を送った。筆を執り、和紙に期待する役割をしたためた。

2023年3月21日。

日本では同22日。あの日から1513日。“後悔”は“歓喜”に替わり、マイアミに10度、舞った。「最後のユニホームだと思っている」と明かすと「これ以上ない、最高の侍です!」と締めた。悔いなく、戦いを終えた。【古川真弥】

【WBC】 侍ジャパンが3大会ぶり世界一! 大谷がトラウト三振斬りでMVP/決勝戦詳細