プロボクシング2階級制覇王者のWBA世界バンタム級1位井上尚弥(24=大橋)が世界最速となる16戦目での3階級制覇を狙う。5月25日に東京・大田区総合体育館で、同級王者ジェイミー・マクドネル(31=英国)に挑戦することが6日、発表された。同日、都内で会見に臨んだ井上は日本ジム所属6人目の3階級制覇に加え、同級で元WBA世界ライトフライ級王者具志堅用高氏(62=白井・具志堅スポーツジム会長)の保持する13度防衛の日本記録更新を目標に掲げた。

 世界最速へ、井上がビッグチャンスを得た。「すごくうれしかったし、モチベーションが上がった」という前哨戦なしで決まったバンタム級の世界戦。プロ16戦目での3階級制覇となれば井岡一翔の18戦目を超える世界最速記録だ。「日本のファンの方がすごくなじみのある階級。自分自身、小さい頃から見てきた階級ですし、そのステージにいけることが楽しみ」と声をはずませた。

 偉業達成の好機に、過去最強の「獲物」が来日する。師匠の大橋秀行会長(52)も「英国の現役世界王者が日本で試合するのは初めて」と興奮する王者マクドネルへの挑戦。亀田和毅を2度倒し、5度の防衛に成功中の英国で人気の王者は身長178センチと同級の現役王者でもっとも背が高い。向き合えば身長13・3センチ、リーチ14センチもの差がある。「今までで最強の相手。やりがいある」と気合を入れなおし「隙はかなりあります。簡単に中(懐)に入ることができるし、ボディー(ブロー)だけは誰がもらっても効く」とイメージを膨らませた。

 さらにバンタム級で具志堅氏の保持する13度防衛の日本記録を更新する目標を掲げた。「減量がきついと言いつつ、スーパーフライで7度防衛できた。この階級で13度を目指していきたい」。辰吉丈一郎、長谷川穂積、山中慎介らWBC世界同級王者の名を挙げ「日本のレジェンドと言われる先輩方が君臨していた階級。なので本当は緑(WBC)のベルトにいきたかった」とも口にした。

 現在、英国ではボクシング人気が高騰中。井上は「アピールできるので、良い内容で勝ちたい」と欧州進出も見据える。WBAにはIBF王座も保持する統一王者バーネット(英国)がいる。「勝っても、さらに上の王者がいる。英国に行って試合したい」。近い将来に見据える野望も胸に秘め、まずは世界最速の3階級制覇を成し遂げる。【藤中栄二】