横綱日馬富士による貴ノ岩への暴行事件は、九州場所中の力士に衝撃を与えた。横綱白鵬(32=宮城野)は暴行現場での同席を問われ、否定しなかった。一方、伊勢ケ浜部屋で日馬富士の兄弟子にあたる大ベテラン、西前頭13枚目安美錦(39)は「本当にお騒がせして、本当に申し訳ない」と沈痛な表情を浮かべ、ひたすら頭を下げた。

 

 出場3場所連続V、前人未到である通算40度目の優勝を狙う大横綱にすれば、歯切れが悪かった。前日に日馬富士を破った貴景勝を寄り倒し3連勝。大満足のはずの白鵬は「残念なニュースが土俵に影響したか?」と問われると「今日の一番に集中して臨みましたから」。日馬富士が休場し、2人横綱となったことには「場所を託されたわけで、稀勢の里と引っ張っていけたら」。そして支度部屋を後にする際、暴行現場に同席した事実を確認されると「場所中なんで…」とだけ言い、右手で手刀を切るしぐさを見せ、質問を遮った。同席を否定しなかった。

 同席したとされる他の力士も歯切れは悪い。日馬富士と同じ伊勢ケ浜部屋の関脇照ノ富士は「全然分かんない」「ノーコメント」。日馬富士、白鵬、照ノ富士と同じモンゴル出身の逸ノ城だけ「自分は(現場に)いなかったから分からない」「(暴行を)今朝のニュースを見て知った」と同席を否定した。

 一方、日馬富士の兄弟子、安美錦は痛々しいほどの低姿勢だった。自分から「本当にお騒がせして、本当に申し訳ない」と切り出した。「いろいろな方々に迷惑をおかけして…。私たちも分からないところがまだたくさんあって、突然のことなので驚いています。ただ、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです」。昭和以降最高齢再入幕記録を更新し、無傷の3連勝を飾ったこの日、弟弟子が起こした不祥事に頭を下げ続けた。

 また“被害者”の貴ノ岩の弟弟子、貴景勝は「分からないので、何も言えないです。(貴乃花親方から説明は)何もないです」と当惑を隠せなかった。【加藤裕一】