両膝を手術した苦労人が、再起への1歩を初の各段優勝で飾った。序ノ口で、ここまでただ一人、6戦全勝だった東序ノ口18枚目の琴誠剛(23=佐渡ケ嶽、本名・高岸翔太、福岡県北九州市八幡西区出身)が、序二段で6戦全勝だった斉藤(24=陸奥)を、もろ手突き2発の押し出しで破り、7戦全勝で優勝を決めた。

 13年初場所で初土俵。序ノ口から1年で西三段目3枚目まで順調に番付を上げたが、左膝の前十字靱帯(じんたい)を痛め2度の手術をして土俵復帰。だが今年春場所の2番相撲で、今度は右膝の同箇所と半月板を負傷し、4月に手術。本来は来年1月の初場所で本場所の土俵に復帰する予定だったが「(出身地が北九州市で)ご当所で出たいと思い、リハビリを頑張って不安もなくなり(医師らから)出てもいい、ということになったので出られました。土俵に上がれるだけで幸せ、という気持ちで今場所は取りました」と感激に浸りながら話した。

 喜んでばかりもいられない。「同期はみんな、上がってますから」と新三役の阿武咲(阿武松)や十両の石浦(宮城野)らの名前を挙げた。もちろん苦い経験から、焦りは禁物も言い聞かせている。目標の関取の前に、まずは博多帯を締めることが許される幕下入りが目標。「早く帯を締めたいですね」。表彰式が行われる千秋楽には、家族が北九州市からかけつける。