ハリウッド直送便

話題作「ゴールドフィンチ」公開週末3日間で大コケ

ピューリッツアー賞受賞の小説「ゴールドフィンチ」をニコール・キッドマンと人気急上昇中の若手俳優アンセン・エルゴートの競演という豪華キャストで映画化した同名タイトルの話題作が、大コケして話題になっています。世界中で絶賛されたドナ・タートの原作は300万部を超えるベストセラーとなり、2014年にはピューリッツアー賞を受賞しているだけに13日に公開された映画も今年の賞レースの注目作品になると見られていました。しかし、蓋を開けてみると公開週末3日間の興行収入はわずか260万ドルにとどまる惨敗となったのです。制作費4000万ドルを投じ、全米2500館以上で公開された作品としては異例の結果で、今年のワーストオープニングという不名誉なスタートとなった「ゴールドフィンチ」とは一体どのような作品なのか、まずは紹介します。

ニコール・キッドマン(2009年2月26日撮影)
ニコール・キッドマン(2009年2月26日撮影)

美術館のテロ爆破事件で母親を亡くした主人公の少年テオは、奇跡的に生き残った現場でがれきの中から見つけた1枚の小さな絵画を、混乱にまみれてカバンにしまって盗みだしてしまうところから物語は始まります。この時持ち去ったのはカレル・ファブリティウスの名画「ゴシキヒワ」で、テオはその後この絵画と共に波乱万丈の人生を歩んでいくことになるという物語です。孤児となったテオは裕福な家庭に引き取られたものの、後に行方不明だったアルコール依存症の父親が突然現れて一緒に暮らすようになり、人生が転落していきます。テオは母親を死に追いやった原因が自分にあるという自責の念と、絵画を盗んだことに対する罪の意識にさいなまれながら成長し、周囲の人たちを巻き込んで波乱に満ちた運命をたどっていくのです。

メガホンを取ったのは、アカデミー賞作品賞と脚色賞、主演女優賞にノミネートされた「ブルックリン」(15年)で監督を務めたアイルランド出身のジョン・クローリー監督。青年時代のテオを「ベイビー・ドライバー」(18年)で注目を浴びたエルゴートが演じ、義母にはベテラン女優キッドマンを起用。また、少年時代のテオ役には「ピートと秘密の友達」(16年)でピートを演じたオークス・フェグリーが抜擢されています。前半部分は回想シーンが多く、やや難解なこともあってか批評家からは「原作を駆け足で描いただけ」といった批判的な意見があがり、映画評論サイト「ロッテン・トマト」でも批評家支持率は25%と低かったことが惨敗の原因の一つと見られています。

個人的には映画そのものは惨敗というほどひどいものではなかったので、ネットフリックスを筆頭にハリウッドを席巻するストリーミングの台頭によって、この手のアート系作品を劇場に足を運んで見る映画ファンが少なくなっていることも原因の一つになっているように感じます。本作もアマゾンが制作費の一部を出資していることから、劇場公開後はアマゾンプライムでの配信が決まっているため、わざわざ十数ドルのチケットを購入して映画館に足を運ばなくても配信が始まってからゆっくり見れば良いと構えているファンも多いのでしょう。

本作が公開された週末の興行収入は、「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」(17年)の続編「IT/イット THE END」が2週連続の首位をキープしたものの、2位にはジェニファー・ロペス主演の実話を基にした犯罪ドラマ「ハスラー」がランクイン。共にオスカー前哨戦といわれるトロント国際映画祭でお披露目されていただけに、「ゴールドフィンチ」とは明暗を大きく分けた形となりました。制作したワーナー・ブラサーズは海外での興行を合わせても制作費の元を取り戻すことは不可能といわれていますが、来月にはオスカーの呼び声が高い「ジョーカー」の公開を控えており、起死回生なるか注目されています。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)

◆千歳香奈子(ちとせ・かなこ) 1972年札幌生まれ。92年に渡米。96年に日刊スポーツ新聞社アトランタ支局でアトランタ五輪取材をアシスタント。99年6月からロサンゼルスを拠点にハリウッドスターのインタビューや映画情報を取材中。

おすすめ情報PR

芸能ニュースランキング