市川海老蔵の新橋演舞場「初春歌舞伎公演」が25日に千秋楽を迎えた。当初は24日千秋楽の予定だったが、チケットの売れ行きがよく、急きょ追加公演となったもの。5月の歌舞伎座で13代目市川團十郎白猿を襲名するため、東京の本公演では最後の「海老蔵」としての舞台となる。

そんな海老蔵が昨年来、強く主張していたことに歌舞伎俳優の「働き方改革」があるが、それが一部でようやく実現することになった。松竹はこのほど、制作している25日間の歌舞伎公演について、4月から休演日を設定すると発表した。「働き方改革を進めるため重要であると経営判断した」という。4月は歌舞伎座が改装中のため、新橋演舞場「四月大歌舞伎」で、15日が休演日となる。

松竹は大劇場での歌舞伎公演の多くをこれまで25日連続で休みなく行っていたが、長時間労働解消に向け、検討を進めていたという。その背景には、海老蔵らの主張も影響したのだろう。海老蔵は数年前から自身が中心となる「七月大歌舞伎」で半日の休みを導入していたが、昨年7月、自身のブログで「歌舞伎は皆さまが思われている以上に重労働」とつづった上で「日々舞台に立つ事は役者にとってとても幸せで名誉な事」としながらも「1日も完全休養がない」「風邪ひいていようと、声が出なくても、具合悪くても、場合によっては歯医者さんや病院も行けない月が数カ月続くこともある」と言及した。

さらに「これは良くない」「自分なら耐えられても、次の世代、次の次の世代に引きずる事は果たしてどうなのか?」「私は変えないといけない、そう思います」と、働き方改革の重要性を訴えていた。1月の「初春歌舞伎公演」も従来の2日初日から3日初日に変更したり、25日興行に満たない22日興行だったりと、有言実行していた。

松竹の正式発表前にも、ブログで「早ければ今年の四月から中日辺りに休みとなる事が現実になるかもしれません」と報告していた。休演日の設定についても「役者も人間ですから、1カ月休みなく50回公演は本当にハードな事と思います」「役者もみな、元気であり続けてほしい。その一念です」としていた。

父の12代目市川團十郎は66歳で亡くなったが、その死の2カ月前に「働き方を考えなければならない」と言っていたことを挙げ、「私の心に深く深く残っています」という。海老蔵は、父の名跡を継承する前に、父の遺志をしっかりと受け継いでいた。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)