パオラ・コルテッレージ(51)は、歌やモノマネも得意なイタリアの人気女優だが、出演作では常に「社会のゆがみへの問いかけ」を意識してきたという。

初メガホンの今作は「自転車泥棒」(48年)をほうふつとさせるモノクロで、この名作の男目線で描かれた戦後の荒廃に、まるで裏側から光を当てるように女性目線で描いている。

ローマの半地下の家で暮らすデリア(コルテッレージ)は、夫の暴力に悩まされながら、意地悪な義父の介護、家事、さらにはかけもち仕事で家計を支えている。現代にも潜む格差や時代を背景に際立たせ、それでも平然と生きるデリアのたくましさを印象づける。

彼女の息抜きは、青果店を営む友人や自動車工の元カレとのさりげない立ち話で、下町人情喜劇のような描写で救いの場面として随所に織り込まれる。

中盤、デリアの元に届いた1通の手紙をきっかけに彼女の行動は変化していく。母の生き方を軽蔑していた年頃の長女の心もしだいに連帯へと動き出す。手紙は元カレからの駆け落ちへの誘いなのか? そんな単純なものではなく、予想外の大団円へ。本国興行収入1位だけのことはある。【相原斎】

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