伊東蒼(11)安藤サクラ(30)主演映画「島々清(かい)しゃ」(来年1月21日公開、新藤風監督)のトークイベントが30日、都内で開催中の東京国際映画祭で行われ、新藤監督と脚本、音楽監督の磯田健一郎氏が出席した。新藤監督は、安藤と「一時、ご近所さんだった」と意外な接点を明かした。

 当時の新藤監督は、12年に100歳で死去した祖父の映画監督兼人さんの介護で、多忙な日々だった。「安藤家の皆さんは、祖父の介護をしてるときの愚痴を聞いてくれる人たちだったんです」。ただ、サクラとは距離を縮められず、「サクラちゃんだけ、安藤家でも別な感じで踏み込めなかった」と打ち明けた。それでも、安藤を女優として起用したい思いは強く、「(父の)奥田瑛二さんとかには『(サクラの姉の)桃子ちゃんとサクラちゃんと仕事したい』と話していた」という。

 新藤監督にとっても、05年の「転がれ! たま子」以来、12年ぶりの監督作。「今回、受けてくれるかも分からない状態だった」と不安ながらも、意中の安藤にオファーを出した。当時の安藤は、「百円の恋」以来、1年の休養中だったが「この現場にいたい」と出演を快諾してくれたという。

 沖縄を舞台に、コンサート出演のため島にやってくるバイオリニストを安藤が、耳が敏感すぎて周囲から変わり者扱いされる少女を伊東が、それぞれ演じた。安藤はプロのバイオリニストという難役で、新藤監督は「泣きながら楽器を特訓してくれた」と安藤の苦労を明かした。クランクイン直後は、ピアノを試し弾きするシーンで手が震えるほど緊張していたという。それでも、新藤監督によると「3日目ぐらいで安藤さんが急に『何か、できそうな気がしてきた』と笑って言ってきた」と、すぐにコツをつかんだ様子だったという。演奏の上達も早く、磯田氏は「ほとんど本人が演奏している」と驚いた。

 子役の伊東は、公開中の映画「湯を沸かすほどの熱い愛」(中野量太監督)でも名演技を披露しており、ダイヤの原石と期待されている。新藤監督も今作のオーディションですぐに才能を見抜いたという。「来た時はとても暗くて、声も聞こえないような子だった。それが、『最近のお仕事でやった場面をやってみてもらえる?』って言ったら、パチッと目の色が変わった。表情豊かな子で、『あ、この子だ』と思った」。来場したファンから「誰が先に才能を見抜いたのか」と聞かれると、新藤監督は「ちょうどこちらのオーディションをしているときに、蒼ちゃんは『湯を沸かす-』を撮影中でした。だから中野監督に軍配が上がります」と明かしていた。