乃木坂46の伊藤万理華(21)が、グループからの卒業を発表した。乃木坂46の中でも、特に「表現者」として、ファンから愛されていたメンバーだった。

 今年3月発売のシングル「インフルエンサー」では、立ち位置こそ選抜メンバーの最後列だったが、グループ史上最高難度の複雑なダンスを見事に自分のものにし、激しい髪の動きや切ない表情で、存在感を発揮。ファンからは「裏のセンターは万理華」などと好評を得た。公開中の映画「あさひなぐ」では、主人公が加入するなぎなた部のキャプテン役を好演。女優として、確かな爪痕を残した。

 ファンや、アイドルに詳しい関係者の中では、以前から表現力を買われていた。13年11月発売のシングル「バレッタ」のミュージックビデオでは、注射で薬を注入され、ろう人形にされてしまう少女を熱演。乃木坂46のシングルの購入特典DVDにしばしば収録される個人PVも常に好評で、特に、13年3月のシングル「君の名は希望」に収録された個人PV「まりっか’17」は、コンサートの休憩時間に披露されるなど、ファンの間で大人気となった。

 さらにさかのぼれば、デビューシングル「ぐるぐるカーテン」(12年2月22日発売)から、片りんを見せていた。同シングル収録の初の個人PV「ナイフ」。ファンの間では知る人ぞ知る名作で、男子生徒に対して一瞬猟奇的な表情を見せる少女を演じきってみせた。運営サイドのある有名スタッフは「万理華の演技が抜群にうまいんです。これを育てて世に出していくのが私たちの使命」などと語り、メディア関係者にアピールしていた。

 伊藤は現在、東京・渋谷のGALLERY X BY PARCOで、メンバー初の個展「伊藤万理華の脳内博覧会」を開催中。写真や愛用品、自らデザインした作品や個人PVなど、展示物の全てをプロデュースした。映画監督で映像ディレクターの柳沢翔氏がメガホンをとった、オリジナルショートフィルムも公開されている。柳沢氏は「ナイフ」の監督でもある。伊藤は「初期から見てくださっている人にはピンと来るような演出もありますよ」と笑う。

 11年8月に1期生として乃木坂46に加入して6年。「ナイフ」からは5年半。少々無理やりかもしれないが、伊藤が表現者として開花した結果が、「インフルエンサー」のミリオンセラーや、「あさひなぐ」のヒットにつながったのかもしれない。11月7、8日の東京ドーム公演は、ステージ上で「表現者・伊藤万理華」のパフォーマンスを見られる最後のチャンスになるかもしれない。卒業後の進路は未定というが、芸能活動を続けるにしろ、芸能界からいったん離れるにしろ、「表現者」として活躍し続けていくことだろう。