人間国宝でもある中村吉右衛門(73)が文化功労者に認定された。兄の松本幸四郎(75)は12年に文化功労者になっており、兄弟そろっての文化功労者となる。また、父松本白鸚も文化勲章を受章しており、祖父の初代吉右衛門も歌舞伎俳優の生前の受章として初めて文化勲章を受けている。
吉右衛門が会見で、初代をはじめ、先人からの思い出深い言葉を聞かれた時の答えが面白かった。初代にはかわいがられたが、「『役者辞めちゃえ』と言われたことをよく覚えております」。数々の役を教わった父白鸚からは「『もう1回、もう1回』と声が枯れるまでせりふを言わされ、それでもできなかったことが記憶にあります」。初代と共演の多かった6代目中村歌右衛門からは「『初代はよかったわねえ』とおっしゃるだけで、どうしたらいいか分からなくて、悩んだこともございました」。
4歳で初舞台を踏んで、来年で70年。耳心地のいい言葉よりも、その時は厳しく、悔しい思いをした言葉が、その後の修業の糧となった。「初代に追いつきたいという思いでやってきました。この頃は体がいうことをきく範囲でやっておりますが、自分の性格なのか、初代のことを思い過ぎたのか、幕が開くと熱中してしまう。玄人の役者ではないなと思います。幕が降りると、息も絶え絶えという状態でございます」。
11月も歌舞伎座で昼の部「奥州安達原」に安倍貞任役で出演している。豪快な中に、幼い娘との深い情愛をみせる貞任をこん身の演技で演じている。



