宝塚歌劇の月組公演「カンパニー -努力、情熱、そして仲間たち-」「BADDY(バッディ)-悪党(ヤツ)は月からやって来る-」が9日、兵庫・宝塚大劇場で開幕し、若きトップ珠城(たまき)りょうが芝居で誠実なサラリーマン、ショーで悪党のヘビースモーカーにふんする異色作に臨んでいる。

 歌、セリフに「リストラ」「今日も残業」「出向させられた」「チケットノルマ」「有給」…。夢世界の宝塚歌劇では異色の現実的な言葉が飛び交う。

 芝居は、伊吹有喜氏の小説「カンパニー」をもとに舞台化。愛妻を亡くした製薬会社の青年サラリーマンが、社の協賛公演を行うバレエ団への出向を命じられ、門外漢の世界で奮闘する物語を描く。現実社会を思わせる歌、セリフに加えて「ぎっくり腰」「できちゃった婚」や、チケットを売ろうとフラッシュモブに挑む場面まで登場する。

 珠城演じるサラリーマンは「誠実」がテーマ。珠城は「劇場に来て頂いた方を笑顔で満たして、興行を盛り立てていかなきゃいけないのは、宝塚に限らず、どの劇団も同じ」と、誠実に稽古に取り組んできた。

 リアリティーあるセリフにも「確かに現実的な部分を切り取ってはいますが、でも、夢々しく、宝塚らしく描く場面もうまく描かれています」。現実と夢世界の融合をうまく表現することで「まったくの夢の世界ではなく、共感をもって、今までと違う余韻にひたってもらえるのではないか」ととらえ、衣装に頼れないスーツ姿のサラリーマン像を築き上げてきた。

 今回は、ショーも芝居仕立て。演出は上田久美子氏で、女性として劇団初のショー演出を手掛けた。

 平和な地球へ、月から悪党が乗り込んでくるストーリーで、珠城は月の悪党のリーダー。踊りながら、話しながらもタバコを吸うヘビースモーカー。最後の大階段、トップの大羽根を背負い、降りてくる場面でもサングラス姿と、ショーもかつてない異色作に仕上がっている。

 宝塚大劇場公演は3月12日まで、東京宝塚劇場は3月30日~5月6日まで。