松原智恵子(75)が24日、都内の大田区民プラザで行われた、渡哲也さん(享年78)の追悼上映会に登壇し、渡さんとの思い出を語った。

松原はこの日、上映された68年「無頼より 大幹部」(舛田利雄監督)をはじめとした、渡さんの代表作「無頼シリーズ」で共演。渡さんが日活に入社した翌年の65年3月に公開されたデビュー作「あばれ騎士道」でも共演している。渡さんは、既に日活で活躍していた宍戸錠さんと同作でダブル主演の形で華々しくデビューしたものの、松原は「お会いした時は、まだまだセリフも…。せりふが、拳を作らないと出てこない。大学を出て(役者の)勉強を何もしてこられなかったんですよね。私も、それを見て緊張した」と振り返った。

渡さんは、青学大の学生だった64年にスカウトされて日活に入社し、翌65年1月18日のデビュー会見では、5枚重ねの瓦を拳でたたき割るパフォーマンスを披露して話題となった。大学では空手道部に所属し、空手2段の腕前だっただけに、デビュー作では不安な気持ちを、拳を握り締めて払拭(ふっしょく)しようとしていた様子がうかがえる。松原は「錠さんが慣れていらして、いろいろ教えてくださった」と、54年に日活ニューフェイスとして入社し、翌55年にデビューした先輩の宍戸さんが“先生”となっていたことを明かした。

松原は学年では渡さんの4年下だが、逆に日活の入社は61年と3年早く、デビュー作は同年の「夜の挑戦者」と芸歴では“先輩”だった。それでも「私が入った時は小林旭さん、石原裕次郎さん、宍戸錠さんがいらっしゃる中に、大学出の渡さんがポッと入った。私も演技が上手じゃないので、一緒に日活映画で育った気がしますね。渡さんが入社されてから、共演が多くなった」と“同期”に近い感覚だったと語った。

渡さんの人柄について聞かれると「笑ったりする時は、すごくかわいらしく笑う。話はしない…聞かれたら答えるという感じで、自らベラベラ話す方ではないです。向こうが緊張しているのが私まで伝わってくる…あまり、ラブシーンはなかったような気がしますけど」と笑った。その上で「渡さんは優しい方。心遣いが優しい。何かにつけ、とがったところのない方。映画の中にも、そのことが表れている。格闘シーンはありますけど、どこか優しさがにじむ人柄…そういう方でした」と語った。

松原自身は、21年でデビュー60周年を迎える。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた自粛期間の中、3カ月間休んだが、沖縄県宮古島を舞台にした映画「ふたたヴィラ」(上西雄大監督)の撮影を終えた。映画「戦国ガールと剣道ボーイ~正々堂々~」(浜本正機監督)の公開も、21年に予定されている。松原は「まだまだ元気なうちは(女優業を)続けようと思っています。私はこれからも元気に映画、テレビを、元気な限り続けていきたいと思っています」と強い意欲を見せた。

渡哲也さんの追悼上映会は、第2弾が11月15日に文京シビックホールで開催される。渡さんが吉永小百合と初共演した66年「愛と死の記録」(蔵原惟繕監督)、98年に吉永と約30年ぶりに共演した「時雨の記」(澤井信一郎監督)、そして97年「誘拐」(大河原孝夫監督)を上映。「時雨の記」と「誘拐」で撮影監督を務めた木村大作監督(81)が、トークゲストとして登壇する。また、両日ともに開場中は、渡さんが出演した宝酒造の過去のCMも上映する。

今回の追悼上映会は「銀幕で観たい! 『昭和の名優』シリーズ第1弾 渡哲也追悼上映会」と題し、戦争の記憶と昭和文化の記録、継承を目的に、6月に設立された非営利団体「昭和文化アーカイブス」が主催している。