「NiziUの辞典があるとしたら、何回改訂版を出さなければいけないのか」-。

20年12月のデビュー時から担当しているが、その成長スピードに何度も置いていかれる。

9人組ガールズグループNiziUが5日、初のツアーを完走した。8月13日の福岡公演からスタートし全7都市16公演、約15万人を動員した。

コロナ禍で、やっと開催できたツアーだ。まだ取材ができることが決まってもない時から、「『Nizi Project』を見て予習しなきゃ!」と、イチから見返した。そしてライブを記事化する際のネタになればと、使えそうな発言やポイントをメモし準備していた。しかし、そのメモを使うことはほとんどなかった。こちらが想定していたよりはるか先に、彼女たちがいたからだ。

記念すべき初ライブのオープニングを飾ったのは、「Nizi Project」のファイナルステージで披露した「虹の向こうへ」。その後も「Baby I’m a star」、「Boom Boom Boom」と、同プロジェクトで披露した楽曲を続けた。「『Nizi Project』を見てきたかいがあった!」。そう思ったのは、最初の数分だけだった。勝手に頭の中で描いていた、「Nizi Project」を絡めた記事構成が、どんどん変わっていく。そこで気づいた。「『Nizi Project』にこだわりすぎていた」。”過去”にばかり目を向けていた自分が、恥ずかしくなった。

オーディション発グループの初ライブだから、オーディションの曲は披露する。だが、それより大切で原稿に書きたいと思ったのは、“今の”NiziUだ。激しいダンスでもビシッとそろう、そしてぶれない歌唱力。歌番組出演時には見られない、自分の担当パート以外時のファンサービス。「試験を受ける練習生」のような姿は、もうそこにはなかった。

公演を重ねるごとにクオリティーも上がっていき、ファイナル公演は関係者もうなるほどだった。個人的に特に鳥肌が立ったのは、RIKU(19)MIIHI(18)NINA(17)による「Never Enough」だ。表情、歌い方、高音、声量。完璧だった。聞き手に感情や思いが伝わるようにパフォーマンスしていた。さらに言うなら、特にMIIHIは、ライブを楽しむ余裕すらあると思った。

ツアーが始まるまでは、本当にファンがいるかすらわからなかっただろう。コロナ禍でおうち時間が増え、「Nizi Project」に多くの関心が集まり、デビューに勢いがついたことも事実だ。ただ、コロナに苦しめられたことの方が圧倒的に多かった。当たり前にファンと対面できていたら、つらいことがあったとしても、リセットできたかもしれない。でもそれができなかった。暗闇の中を、9人で手をつないで歩いている感覚だったかもしれない。

グループのムードメーカーのRIKUは、最後のMCで涙をこらえきれなかった。いつも明るくエネルギッシュ、そのイメージが強すぎるが、見えないところで多くの努力をし、涙を流してきただろう。思っていることを素直に話してくれるRIO(20)は、ツアー初日に「応援してくれている人がいるのかわからなかった」など、本音をファンに明かした。でもファイナルでは「不安、心配だったりをWithUがすべて私たちから吹き飛ばしてくれた」。新たに始まった船出は快晴だ。

虹は、雨が上がった後に発生することが多い。ライブを見ていてNiziUも重なる部分があるかもと感じた。体調不良でデビュー時や韓国初パフォーマンス時にメンバーが不在、新型コロナ感染により初日公演が延期。何度も悔しい思いをしてきた。でもつらいことの後には、必ずいつもそれ以上の素晴らしいものをファンにプレゼントしてくれる。

リーダーのMAKO(21)は「すてきなNiziUというグループにいることができて、そしてグループのリーダーを務めることができて、私は自分を今、誇りに思っています」と言った。こんなすてきな発言が、サラっと出てくる。そんなグループを応援できているファンは、もっと自分たちを誇らしく思えただろう。

オレンジ、水色、紫、黄、白、ライトグリーン、赤、ピンク、青-。9色でできた“Nizi”は、七色の虹よりもはるかに美しく見えた。【佐藤勝亮】