9月8日に96歳で死去したエリザベス英女王が、人知れず骨髄腫の一種、骨髄がんと闘っていたことが、女王の晩年に関する伝記で明かされていることが分かった。英デーリー・メール紙が26日、女王の夫フィリップ殿下と親交のあった作家ジャイルズ・ブランドレス氏が12月に出版する伝記「エリザベス:アン・インティメート・ポートレート」の抜粋を掲載した。王室は9月末に女王の死亡診断書を公表し、死因は「老衰」と発表している。報道に関し、王室からのコメントは出されていない。

ブランドレス氏によると、女王は2021年秋頃から突然「活力の低下」や「疲れやすさ」を感じ始めたといい、医師から無理をせず静養するように忠告を受けて公務のいくつかをキャンセルしており、この頃からがんを患っていたという。晩年の体重の減少や歩行困難などとともにこれらの症状が、骨髄がんによるものであると同氏は推察している。骨髄がんの主な症状は骨盤と腰の骨の痛み、疲労や足のしびれなどがあり、高齢者に多くみられる病気として知られる。

同氏は著書の中で、女王は自身に残された時間が限られていることを常に認識しており、亡くなる直前に聖職者に「後悔はない」と語っていたことも明かしている。また、女王の主治医として30年以上側にいたグラス医師も、「何カ月のもの間、女王の健康を心配してきた。(死は)予期していたことであり、私たちは何が起こるのか分かっていた」と話している。

女王が亡くなる直前の週末だった3日から4日にかけて最期を迎えた英北部スコットランドにあるバルモラル城を訪れた英国教会の聖職者グリーンシールズ氏は、女王と食事も共にし、幼少時代や女王の馬、ロシアのウクライナ侵攻についての悲しみなどについて語り合ったと明かしている。当時の女王の様子について、「生き生きとして魅力的だった。信仰は彼女にとって全てだった。後悔はないと話していた」と述べていることが著書の中でつづられている。

伝記は、70年以上連れ添った夫フィリップ殿下が昨年死去した後、喪失感を埋めるために公務に忙殺していたことや精神を保つために刑事ドラマを観ていたことなども明かされている他、性的虐待疑惑で公務から退いた次男アンドルー王子にも触れている。(ロサンゼルス=千歳香奈子通信員)