坂口健太郎(31)が主演した映画「サイド バイ サイド 隣にいる人」が14日から公開される。

坂口が演じるのは傷ついた人を癒やす不思議な力を持った青年。元恋人役で乃木坂46を卒業したばかりの齋藤飛鳥(24)と現在の恋人役の市川実日子(44)も加わった完成披露イベントが先日、都内で行われた。

おっとりと構えた坂口を挟み、実年齢で20歳離れた新旧恋人役2人の不思議キャラのコントラストが印象的だった。

伊藤ちひろ監督(41)が3人並んだ撮影中のシーンについて「とてもきれいだった」と特別な感情を抱いたことを明かすと、いきなり目頭を押さえた市川が「良かった…」。どうやら映画で頑張ろうとする齋藤の様子を気遣っていたようで、「飛鳥ちゃんは映画の現場にそれほど慣れていないだろうし、坂口君と『これからの飛鳥ちゃんにとって、これがいい経験になるといいね』とずっと話していたんです。だから、うれしくて」と本泣きモードに。

妙な空気になったのを気遣った坂口が目頭を押さえる「演技」で、寸劇風に笑いを誘ったが、この時の市川の涙はまぎれもない本物だったと思っている。

生田斗真(38)が主演した「彼らが本気で編むときは、」の試写会の時だから、もう5年前のことになるが、上映終了後に顔を泣き腫らして文字通りの号泣状態になっている市川を目撃したことがある。

関係者数人の「社内試写」でのこと。出演者でもなく、この映画とは無関係のはずの市川がいることが不思議だったが、トランスジェンダーの女性を主人公にしたユニークな題材に興味を持って足を運んだようだった。生田の好演もあって、確かにグッとくる結末だったが、涙の止まらない市川の姿を見て、そこまで泣くのか、と正直思った。一見ひょうひょうと見えるモデル出身女優の意外な泣き虫ぶりが記憶に残った。

多彩な演技を見せる彼女が、時にそっけないキャラクターを演じたときでも、どこかウエッティーな雰囲気を感じる理由が分かった気がした。

対して、イベントでの突然の「涙騒動」に「これ誰が止めるんですか?」とさらっとコメントを挟み、絶妙のピリオドを打った齋藤にはひらめきで演技をする人という印象がある。

ヒロインを演じた「あの頃、君を追いかけた」(18年)は、独特のテイストの台湾映画のリメーク版だったし、「映像研には手を出すな!」(20年)で演じた主人公は特異な想像力の持ち主だった。一筋縄ではいかない作品にもすんなり溶け込んでみせた。

が、今回のイベントでは、勘に頼らない、意外に地道な役作りを明かした。

「(時間を超越したような)今回の役はつかみどころがなく、私がイメージするだけじゃ、ただただ暗くなってしまいます。監督のいうことをかみしめながら、やっと役柄にたどりつけた気がします」

慎重なアプローチは伸びしろを感じさせる。

出来上がった「サイド バイ-」でも市川と齋藤のコントラストが生かされている。ともにこれからが楽しみな20歳差の2人だ。【相原斎】