10月27日に開幕した、第38回東京国際映画祭を連日、取材している。公式上映、舞台あいさつ、イベント、シンポジウムをはしごする合間に、何とか試写を入れ込み、朝から晩まで各所を走り回っている。10日間の会期の半分も過ぎると、時折、疲労も感じるが、そんなこと、言っていられないとネジを締め直しているのは、元気な90代の大御所2人を目の当たりにしたからだ。
1人目が、94歳の山田洋次監督だ。新作映画「TOKYOタクシー」(21日公開)が東京国際映画でセンターピース作品に選ばれ、10月29日に公式上映が行われた。舞台あいさつの中で特別功労賞を授与されるなどし30分強、登壇。翌30日には興行収入(興収)166億5000万円と歴史的ヒットを続ける「国宝」の李相日監督(51)と、1時間近く対談。冒頭に「僕の映画と彼の映画と並べて紹介していただいたけれど…彼の堂々たる作品と、僕の軽い作品とを比べると恥ずかしい限り。見て聞いてみたいことを聞いてみたい」と口にすると、李監督に矢継ぎ早に質問した。
自身の「TOKYOタクシー」に話を向けられた際は、木村拓哉(52)の真摯(しんし)な姿勢をたたえるなど一通り、話はした。李監督からの質問にも答えたが「僕の映画なんかじゃなくて『国宝』の話をしたい」と、再び李監督への質問を再開し、会場を笑わせた。
山田監督に負けず劣らず、元気なのが92歳の岡田茉莉子だ。1日に東京国際映画祭・日本映画クラシックスで上映された「生誕120年 成瀬巳喜男特集 浮雲 4Kデジタルリマスター版」上映会に登壇。後方入り口から15列ある客席の脇を通る結構、傾斜のある階段通路を降りて登壇。近況を聞かれると「運動は、よくしております。スポーツクラブに行って、全身を動かすように…エアロビクスもやっています」と、92歳ながらエアロビで体を鍛えていると明かした。「全く元気です。ありがとうございます。どこも悪くないし…今のところは。頭も大丈夫だと思います」と口にした通り、舞台あいさつが終わると、階段通路を歩いて上り、退場した。
2人よりは若いが、「TOKYOタクシー」に出演の倍賞千恵子も、84歳だが元気だ。10月20日に本編にも東京の名所として出てくる東京タワーで行われたイベントはじめ、山田監督と木村拓哉(52)とともにプロモーション活動を精力的に行っている。
倍賞よりも、さらに若い63歳とはいえ、是枝裕和監督も精力的だ。現在、綾瀬はるか(40)と千鳥の大悟(45)が主演する新作映画「箱の中の羊」(26年公開)を撮影中だが、2日午前10時から東京・日比谷で開かれたシンポジウム「シネマ・コネクティング・ジャパン官民連携フォーラム」に登壇。「新作の撮影中でスタジオから抜けてきて、こういうところで話す頭になっていない」と口にしつつ、東宝の松岡宏泰社長(59)や内閣府、文化庁、経産省の関係者らと1時間弱、クロストークをした。
その後、同11時30分からは、21年の米アカデミー賞でアジア系女性初の監督賞、作品賞、主演女優賞の3冠を受賞した「ノマドランド」で知られ、東京国際映画祭のクロージング作品「ハムネット」(27日)を手がけた中国出身のクロエ・ジャオ監督(43)と1時間にわたって対談。その足で六本木に移動し、午後3時過ぎから高畑充希(33)中島健人(31)らとトークセッションを30分、行った。
是枝監督は、ジャオ監督との対談の中で「去年、映画を撮っていない。今年、2本撮って、ずっと現場に立っている。ワークライフバランスが崩れ、それが嫌ではない体になった」と自らを評した。さらに「来年、撮るものの脚本は、この春には上げていて、撮影が終わると、その準備に入ります」と、さらなる新作があると明かし「大丈夫か、俺? と思っています」と言い、笑った。
4人に共通していること…それは、東京国際映画祭全体に満ち満ちている、愛する映画の“海”の中に飛び込み、浸っていることだろう。取材している記者も“映画の海”に浸っている1人だ。是枝監督とジャオ監督との対談を取材した後、プレスセンターに向かう途中で、映画祭事務局の大ベテランの関係者から「あと3日…頑張りましょうね」と声をかけられた。「お互い、頑張りましょう」と返し、笑みを交わす…疲れなど、どこかにいってしまっていた。【村上幸将】



