牝馬3冠へ「すべて」を生かす-。5戦4勝の女王リバティアイランド(牝3、中内田)が、秋華賞(G1、芝2000メートル、15日=京都)で史上7頭目の快挙に挑む。連載「3冠の女神へ」で、鞍上の川田将雅騎手(37)が胸に秘めた思いを明かした。

海外3カ国でG1を制し、2年連続のリーディングへ突き進む日本一の名手が、デビュー20年目で初の3冠制覇に挑む。【取材・構成=太田尚樹】

切れ長の目が放つ光は、緊張にとがることなく、静かな輝きをたたえている。女王リバティアイランドと歩む3冠への道。川田騎手が胸の内を言葉で表した。

「いつも通りの週末を過ごしていきながら、毎週、週中も含めて大事なレースがありますので、気がつくと『こんなに近づいているんだ』という感じです」

5日の1週前追い切りで4カ月ぶりにまたがった。

「無事にここまで進んできているのが一番。順調にいくのは本当に大変なこと。1日1日を順調に積み重ねていく大切さは、携わる人が一番感じるものです」

昨年7月に出会い、すぐに素質を確信したという。

「新馬の1週前追い切りで初めて乗った時点で、競馬でもこのままちゃんと走れたなら『香港(12月の阪神JFと同日の香港国際競走)は行かない』と言おうと決めていました。まだ夏でしたけど、乗せていただいている馬が何頭か香港へ行く可能性があり、早い段階で決めた方が迷惑がかからないだろうという、僕なりの判断でした。レースでちゃんと走れたので『この馬と阪神JFへ行くから香港には行けません』というのを関係者に伝えさせていただきました」

この手綱は譲れない。視線は未来へ向いていた。

「1週前追い切りの時点で乗り難しかったですし、新馬も乗り難しかった。だからこそ、レースにおいてはすべて僕が1個1個、丁寧に教えてつくっていきたかった。それは豊かな将来性を感じたからこそです」

中内田厩舎と手を携え、その大輪を花開かせた。

「デビューした時から力みが強い馬で、将来を見据えて我慢を教え続けてきた結果、上手に走れるようになった。それが桜花賞の走りでした。1回走ったことで(オークスでは)スイッチが入ってしまうところはありました。ただ、力むというほどではなかったです。前向きに進むのを、2400メートルなのでちょっと我慢してもらいつつ。ちゃんと我慢してくれました。将来のために、いろいろな適性を見極めるために、ある程度、最後までしっかり走ってもらったというレースでした」

自身も3冠初挑戦だ。

「たくさんのいい馬に乗せていただいて、複数のG1を勝った馬の背中もたくさん知っていますけど、デビューからずっと手綱をとりながら、これほどの成績を残しながら、歩んでいくのは初めて。だからこそ、僕がこれまで経験してきたもの、培ってきたものを、ここですべてリバティに対して生かしたいです」

20年目の今年は日本人初のドバイワールドC制覇など、快進撃を続ける。

「積み重ねてきたキャリアの中で、今年これだけの仕事をさせていただいているのは、間違いなく特別なこと。3冠にトライできるジョッキーが数人なら、実際に3冠をとりきったジョッキーはさらに少ない。3冠に限らず、その先どれほどのことができるのか分かりませんけど、歴史に残るような活躍をできたとしたなら、それだけの馬に携われるのはジョッキーとして限られた人だけ。だからこそ、この時間を大事に過ごしています」

そこに力みはない。

「当日、自分自身がどんな心境になっているのか楽しみです。3冠がかかったレースを経験するジョッキーは数人しかいません。どういう気分や雰囲気で、その日を過ごすのか、僕自身も楽しみにしています。ただ、これは聞かれたから答えているだけであって、僕の仕事は彼女らしくレースを走らせること。そこにフォーカスしていますから。僕にとって(自分の心境は)メインではないです」

やるべき仕事は決まっている。リバティアイランドが本来の走りを見せられるようにエスコートするだけだ。

「無事に当日を迎えて、レースにおいて、この子らしく走れるように。それだけです。それを多くのファンのみなさんに楽しんでいただければ。競馬ファンが楽しみにする、そういう存在ですから。競馬というのは、スターホースの走りをみんなで楽しんでもらえるのが一番です」

◆川田将雅(かわだ・ゆうが)1985年(昭60)10月15日、佐賀県生まれ。佐賀競馬で曽祖父の代から調教師の家に生まれる。安田隆行厩舎所属で04年3月に騎手デビュー。16年にマカヒキでダービー初制覇。21年にラヴズオンリーユーで日本人騎手初の米BC制覇。昨年に自身初のリーディングを獲得して史上4人目の騎手大賞に輝く。8日には長男純煌(ぎんじ)くんがJRAジョッキーベイビーズで優勝。JRA通算1万2006戦1948勝(9日現在)。JRA重賞128勝、うちG1・24勝。159センチ、51キロ。

◆JRA牝馬3冠馬 過去6頭誕生。86年メジロラモーヌが史上初めて牝馬3冠を制した(当時の3冠目はエリザベス女王杯)。03年スティルインラブが17年ぶりに扉を開くと、10年アパパネはオークス1着同着(サンテミリオン)を含む3冠。12年ジェンティルドンナはジャパンC連覇などG1で7勝を挙げ、18年アーモンドアイは史上初の芝G1で9勝。20年デアリングタクトは史上初めて無敗で牝馬3冠を達成した。