2014年から設立されたJ3クラブの意義を、考えさせられました。

 2018年シーズン開幕に向け、各チームが次々と始動しています。先日行われたJ3藤枝MYFCの新体制会見には、新加入選手16人が並びました。その後も続々と追加発表され、19人の新加入が決まっています。昨季のチームから継続して所属するのは10人のみで、約2倍が新加入という状況です。

 主力がチームを離れた大きな理由は「引き抜き」と言えます。藤枝は、攻守の切り替えが早いパスサッカーのスタイルを貫いており、2年連続で7位に入っています。その中で活躍していた選手たちが注目され、J2クラブや、J2クラブライセンスを持つJ3クラブに「昇格」しているからです。藤枝はJ2クラブライセンスを持っていないため、主力選手の流出は仕方のないことだと思います。

 J1、J2の上位リーグを目指している選手にとって、藤枝で結果を出すことが大きな飛躍のきっかけになっています。つまり上位リーグへ移籍するための「育成」の役割を担っているのです。16年シーズンも18選手がチームを離れ、18人が新加入しました。そこで加入した選手たちが昨季の主力となり、チーム最高タイの7位に貢献しました。指揮をとって4季目になる大石篤人監督(41)は「藤枝のスタイルだから、成長している。選手の成功の手伝いができていると思う」と、羽ばたいていく選手の後押しを惜しみません。その一方で「『出ていきたくない』と思われるくらいのクラブにしないといけない」とも話していました。

 育成としての役割を果たす藤枝には、大きなポテンシャルを持った選手たちが集まっています。他チームからより条件の良いオファーがあった場合でも「藤枝でサッカーをしたい」と自ら希望して来た選手もいるそうです。指揮官は「(年俸が)安くても藤枝でやりたいと言って、喜びを感じてくれることはうれしい」と言っていました。

 選手の大幅な選手変更は、チーム作りにおいてマイナスです。戦術の理解や浸透、チームメート同士の連係もゼロから構築しなければいけません。それでも大石監督はとても前向きです。「大変だと思われるかもしれませんが、楽しさしかない。全く悲観していません。(移籍した主力の)穴を埋めるのではなく、それ以上のものを求めている。選手の成長をサポートしていきたい」。

 今季の藤枝の目標は「5位以上」。選手の入れ替えを経て、さらなるパワーアップが期待できます。



 ◆保坂恭子(ほさか・のりこ)1987年(昭62)6月23日、山梨県生まれ。埼玉県育ち。10年入社。サッカーや五輪スポーツ取材を経て、15年5月から静岡支局に異動。今年もJ1清水とJ3藤枝の担当。2年前、磐田で取材していたDF木下高彰(24)が今季、J2水戸から藤枝に期限付き移籍。活躍が楽しみです。