たまたま入った書店で、目に留まる位置に平積みで置かれていた。教育学者の斎藤孝氏が監修した「こども孫子の兵法」(日本図書センター)。興味はあっても難解なイメージが先行して、興味だけにとどめていた兵法書。思わず手に取りめくると、改めて気づかされる言葉が載っていた。
ベルギーでワールドカップ(W杯)日本代表発表前、最後の海外遠征が2試合あった。マリに1-1、ウクライナに1-2。結果に失望した人は多かったようだ。つまらない試合だったという声もよく聞こえた。
勝つことを期待していた人からすれば、確かにそうだ。内容で上回る試合を望んだ人にしても、確かに。そう期待した1つには、W杯に出場する日本が、W杯に出られない2国に勝って当たり前-。そんな思い込みが広まっていたからだろう。ただ、DF昌子源(鹿島)は言う。「今、欧州はイタリアやオランダがW杯に出られない時代。ウクライナは本当に強かったと思うし、見ていてうまかった。(伝えられる情報が)相手をなめているものだったよね、そもそも」。
ウクライナは、わずか1勝分の差でクロアチア(W杯本大会出場)に劣ってプレーオフに回れなかった。そう考えると…。あるいはマリではなくイタリアだったら、ウクライナでなくオランダだったら、同じ反応にはならなかっただろう。イメージだけで左右される。それは相手を知り得ていないことにほかならない。
ただ、サッカー担当の立場で言うのはとても心苦しいが、自分は2試合の結果に“失望”はしなかった。
担当になる前まで、見聞きする中で今の日本代表に「強い」という印象がなかった。担当になった今も変わっていない。少なくとも、今の日本は強くない。もっと過激に言えば、弱い。だから、日本がミスを重ねようと、幾度も抜かれようと、さもありなんと受け入れ、どれだけ耐えられるかという視点で見ていた。
結局、日本は耐えられなかった。それだけだった。戦い方は変えずか、とは思ったが、結果に失望はしなかった。だけど、試合後の反応から察するに、日本はもっと強いはず-と思っている人たちは多そうだ。もしかしたら、選手たちの中にも。それは、己を知り得ていないことにほかならない。今の日本は強くない。
ただ、それを受け入れることは、W杯で勝ち抜くことをあきらめることとは違う。世界を戦ってきたハリルホジッチ監督はさすがに分かっていると願う。その認識を監督も選手も、見ている人たちも共有できて、今に見合ったサッカーをすることが許されれば、勝つ“可能性”は高まるはず。あくまでも、可能性が。
「兵は詭道(きどう)なり」。戦いとは駆け引き。そんな兵法も説かれている。全ては本番で相手を出し抜くためのたくらみだった-なんて壮大な計画だったら、格好いいのだが…。【今村健人】
◆今村健人(いまむら・けんと)1977年(昭52)、さいたま市生まれ。昔はサッカー少年。入社後、静岡支局をはさんで06年トリノ、12年ロンドン両五輪を経験し、大相撲担当も延べ6年経験。おおむね今年からサッカー担当に。





