今季は新システム4-3-3に変更して首位を独走する川崎フロンターレが、ピッチ外でも新たなチャレンジを実施した。同一シーズンの90分試合でのJ1連勝新記録となる11連勝を達成した18日の名古屋グランパス戦(等々力)で、PARA-SPORTSLAB.との協同で視覚障害者向けの観戦体験を開催した。「触覚」と「聴覚」でサッカー観戦を楽しんでもらうという、サッカー界初の試みだった。

スタンドの一角に、ピッチが描かれた長方形の箱形の機械が置かれていた。これは手の触覚でリアルタイムに戦況を体感できる「HAPTIC FIELD」というもので、重さは約2キロで縦は24・36センチ、横は35・6センチ、高さ約11・36センチ。ラジオ実況を聞きながら、上部のピッチ部分に出てきて動き回る突起がボールの動きを示し、それを手でなぞって流れを理解。両手首に装着するリストバンドには振動が流れるようになっており、右手と左手でチーム分けをし、「シュート」「ブロック」「スローイン」「喜び」を振動を変えて伝達する。それらを4、5人のスタッフがスタジアムのセンターに設置したカメラ2台などを元に操作し、視覚障害者にリアルタイムで試合を楽しんでもらおうという企画だった。

ブラインドサッカー観戦をさらに楽しみやすくしようということが、開発のスタートだった。18年8月のプロジェクト開始から実験を重ね、テスト運用での意見をもとに触覚で伝える必要最低限の情報量を精査するなどして、昨年11月にほぼ完成型といえる現在の試作品ができあがった。新型コロナの影響で、今年2月のブラインドサッカー大会が中止になり、公式戦での検証機会を逸していた。今回、ようやく試合での使用にたどりついた。

関係者は「世界でも観戦者が多いスポーツなのでやってみようとなりました。観客の方に楽しんでいただくだけでなく、ブラインドサッカー選手の技術向上にもつながる」と未来を描く。プレーする、観戦する、応援する-。サッカーの楽しみ方の可能性はまだまだ無限に広がっている。【浜本卓也】

◆浜本卓也(はまもと・たくや)1977年(昭52)、大阪府生まれ。03年入社。競馬、競輪担当から記者生活をスタート。静岡支局、サッカー、K-1、総合格闘技、ボクシングなどあれこれ渡り歩き、直近はプロ野球を8年間担当。18年12月にサッカー担当に復帰し、サッカー担当キャップを務める。

(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)