1枚の写真がある。
ヴィッセル神戸のブラジル出身FWジェアン・パトリッキ(25)を映したものだ。
開幕戦に途中出場し、後半25分に勝利へと導くゴールを挙げた直後。
大喜びする仲間とともにいる彼は、左の人さし指と中指を首筋にあてて目を閉じている。
ホームのサポーター席の前。ぎっしりと埋まった観衆からは大きな声援を浴びていた。
その姿は少し、異様な光景のようにも見えた。
なぜ彼は、静かに目を閉じていたのだろうか。
「首筋に手をあてて脈を押さえる。私は生きている。それを確認するためにです。生きているなら苦しいことがあっても負けるな! そういうメッセージです」
ポルトガルのサンタクララからセレッソ大阪に移ったのは1年前のことだ。
スピードを生かした攻撃力が認められ、今季から神戸に移籍した。
ただ、これまでは決して順風満帆ではなかった。サンパウロでは出場機会が与えられず、無所属になった時期もあった。
「自分の人生とキャリアの中で、苦労をしてきました。でも常に諦めてはいけない、立ち止まってはいけないと、そう考えていた」
昨季の神戸は開幕から11試合も勝利から見放され、初勝利が5月14日鳥栖戦だった。
この日もMFイニエスタが欠場しただけでなく、DF菊池やMトゥーレルら主力に負傷者が続出する緊急事態。そんな中、2年ぶりとなる貴重な開幕白星を運んできてもJパトリッキは浮かれる様子はなかった。
「プロとして、どんな時でも準備をする責任がある。先発でも、途中出場でも。自分のアクションで流れが変わったことは、うれしく思います」
頼もしい助っ人が開幕戦で見せたゴールパフォーマンス。それは、彼の人生の縮図でもあった。【益子浩一】




