「次は勝ちたい」の気持ちを刺激する/セルジオ越後

<セルジオ流Education>

日曜日の「ニッカンジュニア」はサッカー評論家のセルジオ越後氏(73)が、子育て世代と指導者へのメッセージを送ります。元プロサッカー選手の同氏は、78年からの「さわやかサッカー教室」をはじめ、長期間にわたって日本の子どもたちを指導してきました。今回はその経験の中から、子どもの「やる気」の高め方などの話です。厳しいだけでなく、楽しさや興味を抱かせる「セルジオ流」の接し方です。

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子どもに何をやらせるかよりも、どうやらせるかが大事な場面があります。同じ言葉をかけるにも、言い方の違いで相手の受け止め方が変わることがあるでしょう? 例えば、電子ゲームだって子どもの好き放題に遊ばせておけば、本人が納得するまで続けます。それを大人が隣で「ああしろ、こうしろ」と厳しく指導したら、嫌いになってしまいますよ。

学校では何かと決まり事が多いですね。朝礼で、生徒を整列させて、「気をつけ」の姿勢のまま立たせたとします。後ろの方は前で何が起こっているか見えないからと、何人かがチョロチョロ動く。すると「じっとしていなさい」と怒られる。これが長い時間続いたら、血液が回らなくなって倒れてしまいます。先生の長い話など頭に入ってきません。姿勢を“拘束”されると、頭の中の柔軟性も下がりがちで、想像力も働きにくくなります。

こういう時は座らせたらいいと思います。見えないから興味がわかない。楽な姿勢で、話す人の姿が見えれば違ってきます。

サッカー教室でも、輪になって座らせてから、僕が話をすることが多いです。この時に輪が少しずつ小さくなってきたら、うまくいっている証拠。子どもは好きなテレビ番組を見る時、画面に近づこうとしますよね。番組の途中でも面白いと感じたり、興奮したりすると、自然に前に出ようとします。この行為が子どもの興味のバロメーターだと思っています。

子どものやる気を高めるため、ちょっとからかってみることもあります。1ゴールを決めてガッツポーズをしている子に、いたずらっぽく「まぐれでしょ?」と言ってみる。すると「実力だよ!」と言い返してきますから、「じゃあ、もう1点取ってみてよ」。もう、その子は必死になります。シュートを外すと、本気で悔しがる。そして、本当に2点目を決め、鼻高々で「ほら、実力でしょ!」と来たら、僕は素直に「参りました」と頭を下げる。周囲からも笑いが起きて、一体感が生まれます。

また、サッカー教室の合間にじゃんけんをすることもあった。「最初はグー」で僕がパーを出して「勝った~」と言う。子どもは「ずるいよ!」と言いながらも、本人なりに考えて、次の「最初はグー」でチョキを出す。僕はグーです。すると、「3回勝負だ!」とか「5回勝負だ!」などと言いだして、勝つまで続けようとします。勝ちたくてしかたなく、最初の「ずるい」は消えてしまう。他の子たちからは「次は僕とやってみろ!」と、挑戦状が次々と出てきます。サッカーとは関係ありませんが、気分転換になるし、場が盛り上がります。

負けたら「次は勝ちたい」と思う、誰でも持っている気持ちを刺激する-。それも1つの教え方だと思います。

他にも「シュートを2本外したら負け」「パスが外に出たら負け」という独自ルールのゲームをやります。1度ミスすると、プレーぶりががらりと変わるんですよ。パスをつなぎだし、すぐにシュートを打たずに、決まる確率を高めてから打つようになる。ていねいにプレーすること、味方や相手の動きをよく見ることを覚えます。社会はルールで成り立っていますから、ルールを使って物事を教えるというのも、学びの1つになるでしょう。

もちろん「これができたら、ジュースをあげよう」など、いわゆる「ニンジン作戦」「物でつる」も、やる気を高めますよね。何かを得るために頑張ったり、競争するというのは人間の根本。大人だってボーナスや出世という「ニンジン」のために頑張ることも多いわけです。

ただ、何かやるたびに「ニンジン」を与え続けたり、大した結果じゃないのに高価なものを与えては、効果は薄れていきます。ましてや何もしないのに普段から物を与えすぎていたら、果たしてこの作戦が子どもに響くのか…。ご褒美の中身と、それをあげるタイミングを工夫してあげた方が、本人のためになるのではないでしょうか。

◆セルジオ越後 ブラジル・サンパウロ生まれの日系2世。18歳でブラジルの名門コリンチャンスとプロ契約。同国代表候補にもなった。72年に来日、藤和不動産サッカー部(現湘南)でプレー。78年から「さわやかサッカー教室」で全国を回り、開催1000回以上、延べ60万人以上を指導。その経験から「セルジオ越後の子育つ論」など子育て本も出版。93年4月から日刊スポーツ評論家。06年文部科学省生涯スポーツ功労者表彰受賞、13年外務大臣表彰受賞。17年旭日双光章を受章。H.C.栃木日光アイスバックスのシニア・ディレクター、日本アンプティサッカー協会最高顧問。