「年俸120円Jリーガー」としてプレーし、今季限りでの現役引退を表明しているJ3、YSCC横浜のFW安彦考真(42)が、リーグ最終戦後のセレモニーで引退後の格闘家転向を発表した。目標のひとつとして格闘技イベント「RIZIN」参戦も掲げ、42歳の新たな挑戦をスタートさせる。

安彦は現役最後となったこの試合でプロ初先発を果たし、2トップの一角として後半13分までプレー。惜しくもプロ初得点はならなかったが、前半からアグレッシブにボールを追いかけると、後半7分の先制時には前線で起点にもなった。 サッカー選手引退後の生活については、野球やトライアスロンなどへの挑戦も考えたというが、「身ひとつで戦って、コロナ禍における停滞感や閉塞(へいそく)感を吹き飛ばしたい」と格闘家への道を決意。もともと格闘技は好きだといい「サッカーではカズさん(三浦知良)、格闘技では辰吉丈一郎さんに憧れているんです」と話していた。今回も「人生をかけてサッカー選手になり、今度は命をかけて目指します」と気合十分に語り、新たな挑戦に目を輝かせた。

安彦は39歳の時に「お金に縛られている自分の人生に嫌気がさした。人生の後悔を取り返しに行く」と20代の頃に1度は諦めていたJリーガーへの再挑戦を決意。18年に練習生を経てJ2水戸ホーリーホックとプロ契約を結んでその夢を実現させると、昨季からYSCC横浜へ移籍。同開幕戦で41歳1カ月9日で途中出場してプロ初出場を飾り、ジーコの持つJリーグ最年長初出場記録(40歳2カ月13日)を更新していた。

水戸でのプロ1年目は年俸10円、YSCC横浜での2年目は120円、今季も120円と“ほぼ0円”での契約も話題に。現役最後となるこの日の試合へ向けては「大きな批判や誹謗(ひぼう)中傷も受けたが、うそをついていた自分を辞めることができ、この3年間で自分のことが好きになれた。正解のないこの時代に何をもって成功とするか。それは僕は挑戦だと思っています。生き様はその人の価値全てを表す。これからの時代に必要なパッションや思考、行動、そういったもの全てをサッカーのプレーから見せていきたいと思います」と意気込んでいた。【松尾幸之介】