陸上男子の桐生祥秀(21=東洋大)が男子100メートルで日本初の9秒台をマークした。速さの秘密は、硬い足首と1秒間に5歩も刻める高速ピッチにあった。

 身長176センチと大柄でない桐生の武器はどこにあるのか? まず足首が硬い。立った状態でかかとを地面につけたまま、お尻を真下に落とすとバランスを崩して後方に転ぶ。和式トイレも苦手。スポーツでは関節の柔らかさが競技力を向上させるケースが多いが、スプリンターは違う。硬い足首が地面から受ける反発の力を逃さず推進力に変える。「足首はなるべく硬く使う」。さらに1秒間5・0歩の高速ピッチ。ボルトの4・48歩を上回り、世界歴代2位タイソン・ゲイと同じレベルにある。

 日本陸連の科学委員会のデータによると、9秒台に達するための条件はトップスピードが秒速11・60メートル(時速41・76キロ)以上になること。3月オーストラリアでの競技会。10秒04で走った桐生は簡易的な計測ではあったが、秒速11・70メートル(同42・12キロ)を出した。データ上は、風やレース運び次第で、いつ9秒台を出してもおかしくない状況だった。