来年1月2日、3日の東京箱根間往復大学駅伝は「無観客」で開催することが発表された。それによって考えられる選手や勝負への影響は? 青学大3年時に山登りの5区で区間新記録を樹立し、「3代目山の神」と呼ばれ、現在はプロランナーとして活躍する神野大地(27=セルソース)に話を聞いた。【取材・構成=上田悠太】

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神野は、「無観客」とはいえ大会が開催されることを喜んだ。そもそも開催可否が心配されていた。

神野 学生は同じメンバーで1年しか戦えない。4年生は最後の箱根。来年はない。この状況では開催されることが最重要なので。

コロナなど存在しなかった時-。何度も声援に支えられたことを覚えている。

神野 箱根のように20キロ走れば、きつくなる時がある。でも家族やチームメート、ファンの声で諦められない気持ちになった。

ただ、今の社会情勢を考えると、沿道に人を集めるわけにはいかない。「全員が同じ条件。与えられた中で、選手がベストを出せる準備をすることが一番大事」と強調する。

箱根駅伝は例年、5区の山登りが大きく勝敗を左右する。「無観客」になれば、その流れは、より顕著となる可能性も指摘する。

神野 5区は選手の力量、調子の良しあしで、いつも以上にタイム差が生まれるかもしれない。山は気持ちが切れたら、終わり。立て直すことができない。気持ちを保つ要素に応援は大きいですから。今、5区を振り返れば、僕も応援がなかったら、苦しかった。

異例のシーズン。どんな選手が力を発揮できるか。

神野 出雲駅伝も中止で、モチベーション維持が難しい時期もあったはず。その中で日々、淡々と変わらぬ努力をしてきた選手が結果を出せる大会なのかな。

ロードレースは中止が相次ぐ。それは観客が密になる恐れも一因にある。

神野 応援に行かないことが、一番の応援になる。陸上選手の職場を失わせないためにも、コロナが消えるまで、決められたルールの中で応援をお願いします。

箱根駅伝の影響力は大きい。陸上界に日常を取り戻すため、ファンがモラルを示すことも重要になる。

◆神野大地(かみの・だいち)1993年(平5)9月13日生まれ、愛知県津島市出身。神守中-中京大中京-青山学院大。箱根駅伝は2年時に2区で区間6位。3年は5区で区間新記録でチームの初Vに貢献し、山の神を襲名。故障に苦しんだ4年時も5区で区間2位。卒業後はコニカミノルタを経て、18年5月にプロに転向。マラソン自己記録は18年東京の2時間10分18秒。昨年9月の東京五輪代表選考会マラソン・グランドチャンピオンシップにも出場。165センチ、46キロ。