22日付の一般紙の1面は何ともシュールだった。ある新聞は『“GO TO トラベル”スタート』の記事の横に『都知事“4連休は外出控えて”』の見出しが並ぶ。別の新聞は『コロナ拡大 イベント緩和延期へ』の記事の横に『GO TO スタート』。何だか頭の中が混乱してくる。

ページをめくると「GO TO……」の説明会の記事。若者や高齢者の団体旅行は「リスクが高い」と指摘した上で、国土交通相がこうした旅行の自粛を促すよう事業者に求めたとある。一方でスポーツ面には8月10日に甲子園で始まるセンバツ代表32校の交流試合の大きな展望記事。本当に予定通り開催されるのか疑わしくなる。

そもそも「GO TO……」はコロナ収束後に実施されるはずだった。それが収束どころか、再拡大しているのに前倒ししたたことで、全国から批判や反対の声が上がっていた。制度の仕組みがはっきりせず、具体的なコロナ対策も示されず、何より事業者や利用者へのていねいな説明が欠けていた。

その「GO TO……」から「東京から感染が広がっている」(西村経済再生担当相)との理由で除外された東京都。22日に7月の感染者数が、緊急事態宣言下の4月を超えて最多になった。新型コロナの猛威は増しているが、来夏の東京五輪の日程はすでに発表され、開幕1年前の23日には国立競技場から世界へメッセージが発信される。

20日に公表された共同通信の世論調査では「東京五輪を開催すべき」は23%。7割超の人が「再延期すべき」「中止すべき」と回答した。来夏の開催は民意とは大きな隔たりがある。当然、五輪の成功には都民の支持が欠かせない。なぜ、どうやって開催するのか。綿密な準備ととともに、ていねいに説明しないと『GO TO……』の二の舞になりかねない。

それにしてもコロナ禍以降、安倍政権下の政策に国民は振り回され続けている。減収世帯限定の30万円給付が全国民一律の10万円給付に変更されたのを皮切りに、『アベノマスク』の配布の迷走、『GO TO トラベル』の混乱……。こんなことを続けていて、この国は本当に大丈夫なんだろうか。来夏の五輪開催の是非はともかく、今はそっちの方が心配だ。【首藤正徳】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「スポーツ百景」)