東京オリンピック(五輪)会場のカヌー・スラロームセンターで、代表選手たちが再び汗を流している。コロナ禍の影響などで利用できない状況が続いていたが、先月下旬より、まずは五輪出場内定者を対象に練習可能になった。

16年リオデジャネイロ五輪銅メダリストの羽根田卓也(33=ミキハウス)は再開直後、「この激流を楽しみに、自粛中ずっと過ごしてきた」と喜んだ。

自粛期間中には、自宅の浴槽でパドルをこぐ羽根田の様子が話題を集めた。現在ともに練習に励む足立和也、矢沢亜季の日本代表選手も、それぞれが工夫をこらし、水上での感覚をイメージしてきた。

存分に練習できない悔しさを味わったからこそ、いま感じる喜びは大きい。本番コースで生き生きとした表情を浮かべる3人を、日本カヌー連盟の塩沢寛治強化部長は「水を得た魚のよう」と表現した。

とはいえトップ選手だからこそ、感覚を完全に取り戻すことは容易ではない。リカバリー(回復)トレーニングに取り組む現在の各選手の動きは、「本来のものに戻るには、もう少し時間が掛かりそう」(塩沢強化部長)。半年近いブランクの影響を埋めるべく、連日、本番コースで激流に対峙(たいじ)する。

開催が1年延期されたとはいえ、残された時間は限られている。強豪スロベニアでは、早くも5月末には国内大会を実施した。日本もどこかでペースを上げていく必要がある。

塩沢強化部長は「試合感覚は大事。いずれはレース形式のタイムトライアルなどを行えれば」

そのためにも本番コースを有効活用し、まずは調子と感覚を取り戻すことに注力する。【奥岡幹浩】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)