日本のエースが残った! 世界5位の錦織圭(25=日清食品)が、昨年3回戦の再現となった同55位のシモーネ・ボレリ(イタリア)との初戦を6-3、6-7、6-2、3-6、6-3の3時間22分、フルセットの激闘で切り抜けた。松岡修造と並ぶ日本男子大会最多7度目の出場で、賞金4万7000ポンド(約937万円)を確定し、生涯獲得賞金がアジア男子初の1000万ドル(約12億5000万円)を超えることが決まった。

 “ブラックホール”に落ちかけた。錦織が時折見せる集中力の低下。特にリードすると、危険なブラックホールが待ち受ける。しかし、最後は底まで落ちず、何とかはい上がりフルセットで勝利をものにした。「まずはホッとしている。テニス自体は良かった」。

 ストレートで勝ってもおかしくない流れだった。第1セットを奪い、第2セットもタイブレークまで、1度もブレークポイントさえ与えなかった。しかし、タイブレーク2-1リードで、自分のサーブ。気が少し緩み“ブラックホール”が口を開けた。「自分の悪いところ。直していかなくてはいけない」。5点を連続して失い落とした。

 実は、錦織は全体で1度しかサービスゲームを落としていない。相手は5度も落としているのに、結果はフルセットにもつれた。つまりポイントのかみ合いが悪く、集中力の低下が招いた大事な場面でのわずかな失点が響いた。フルセットで試合が長引けば、大会前に痛め不安を抱える左ふくらはぎにも影響が出る。

 少し足を引きずりながらも最終セット、一段ギアを上げたところはさすがだった。3-0とリードを広げると、治療のタイムアウトを取って左ふくらはぎのテープを巻き直した。少し動きは悪くなったが「最後はほぼ完璧だった」。昨年の3回戦と同じ5セット。2年連続でブラックホールに完全に吸い込まれる前に、見事にはい上がった。

 次戦は、過去6勝1敗と相性のいいヒラルドが相手だ。負荷のかかった左ふくらはぎに、古傷の股関節も不安だ。それでも故障について聞かれても「(ケガが)あっても言わないと思います」とけむに巻いた。

 この1勝で、アジア男子初の1000万ドルプレーヤーの誕生だ。しかし「お金はあんまり…。興味なくはないですけど、何百勝の方がうれしい」。これだけ稼いでもお金には無頓着。最後は苦笑いで、さわやかな錦織らしさを振りまいた。【吉松忠弘】

 ◆WOWOW放送予定 1日午後7時半~、2日午前0時~、男女シングルス2回戦ほか。すべてWOWOWライブ。生中継。放送時間変更の場合あり。