まさに錦織劇場だ。世界9位の錦織圭(27=日清食品)が、第1セット1ゲームも取れない瀕死(ひんし)の状態から、不死鳥のようによみがえった。

 元トップ10で、同37位のフェルナンド・ベルダスコ(スペイン)に0-6、6-4、6-4、6-0の4セットで勝ち、「何とか(流れを)変えたいと思った。深く打つことだけを考えた」と15年以来大会2度目の8強入りを決めた。また、この勝利で、4大大会8強以上が7回となり、佐藤次郎(故人)、伊達公子と並んでいた日本人4大大会8強以上進出の最多回数を塗り替えた。

 全く動けない第1セットから、必死の思いで巻き返した。前日に「ケガはない。大丈夫」と話していたが、明らかにフットワークは鈍く、取れそうな球を見送る場面もあった。

 しかし、心は折れなかった。必死で相手のスキを探し、安定しないフォアの代わりに、バックで攻撃を仕掛けた。武器のフォアの決定打が8本にとどまったのに対し、バックは11本を奪った。最大のヤマ場は、セットを分け合った第3セット第7ゲーム。相手のサービスゲームで、6度のジュース。お互いに死力を尽くした攻防で、錦織がブレーク。そのまま第3セットを奪い、第4セットは見事に完封で返した。

 次戦は世界1位のマリー(英国)が相手。「自信が戻ってきた」という錦織が、再び死にものぐるいで挑む。