五輪イヤーに新星が誕生した。慶大1年の18歳、佐藤翔馬(東京SC)が2分7秒58の好タイムで優勝した。昨夏世界選手権銅メダル渡辺一平(22=トヨタ自動車)と競って、自己ベストを1秒63も更新。

昨夏の世界ジュニア選手権銀メダリストが、東京オリンピック(五輪)を視界に捉えた。五輪2大会連続2冠の北島康介氏(37)と同じ東京SC所属。その名を冠した「北島康介杯」で堂々の名乗りを上げた。

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雄たけびを上げて、右腕で水面をたたいた。18歳が、前世界記録保持者渡辺を撃破した。自己記録を1秒63も更新する2分7秒58。衝撃的なタイムを出して「2分8秒台を出してないのに7秒台なんて。今年の目標をもうクリアした。とっさに出ちゃいました、ははは」と驚きの表情で笑った。

接戦を制した。5レーンの佐藤は、2レーンの渡辺が見えてなかったが、自慢のキックを生かしてぐいぐいと進む。前半100メートルで0秒06のリード。そのまま0秒28差で押し切って、会場を大きくどよめかせた。

昨夏の世界ジュニアで銀メダル。9月の日本学生選手権で世界ジュニア記録の2分9秒21。しかしこのタイムでは世界選手権の決勝にも進めない。同種目は渡辺、チュプコフ(ロシア)ら3人が2分6秒台を持つハイレベルな種目だが、18歳のタイムは、その挑戦権を得たといえるものだ。

運命的な快記録だ。東京都港区生まれ。ヨットが好きな父新平さんが「海に落ちて溺れないように」と0歳から水泳教室に。小3の時に「通っている友達が多い」という理由で、北島氏らを輩出した名門・東京SCに入った。昨春には慶応高から慶大に進学して、授業もおろそかにせず競技に励む。佐藤を指導する西条コーチは「第一印象はすごくバネがある選手。普段から休まずに学校に行くが、高校時代に比べて、大学生になって練習量が増えてきた」。当初は24年パリ五輪が目標だったが、一気に東京五輪が視界に入った。

北島杯で平泳ぎに新星が誕生。東京SCの先輩、北島氏からは表彰式で「このまま4月まで気を抜かずに頑張って」と激励された。「五輪メダルラインの2分6秒台が見えてきた。目標は五輪でのメダル。北島さんはほど遠い存在ですが、世界記録を出してその存在に追いつけるように頑張りたい」。18歳の可能性は計り知れない。【益田一弘】

◆佐藤翔馬(さとう・しょうま)2001年(平13)2月8日、東京都港区生まれ。0歳から水泳教室、小3で東京SCに入る。高1から西条健二コーチに師事。慶応高-慶大。昨夏世界ジュニア選手権200メートル平泳ぎ銀メダル。目標の選手は北島康介、立石諒。趣味はラーメンめぐり。好きな食べ物はタピオカと牛タン。177センチ、74キロ。

▼男子200メートル平泳ぎ (1)佐藤翔馬(東京SC)2分7秒58(2)渡辺一平(TOYOTA)2分7秒86(3)小日向一輝(セントラルスポーツ)2分9秒09