体操男子でオリンピック(五輪)個人総合2連覇の内村航平(31=リンガーハット)が7日、「新様式モード」を戦い抜く覚悟を示した。今日8日に東京・国立代々木競技場で行われる国際大会の前日オンライン会見に登場。五輪競技ではコロナ禍で初めて日本に海外の選手を招いた大会は、過剰なほどの感染対策を敷く。調整過程のPCR検査で新型コロナウイルスに「偽陽性」と判断されたキングは、「普通じゃない所で普通にやれるか」が結果を残す鍵と説いた。

   ◇   ◇   ◇

「これが今日の本題ですもんね」。内村がおおらかにほほ笑んだ。「偽陽性」に関する質問が出ると、五輪選手でも類いまれな経験値を持つ男は、冷静かつ覚悟を持った発言を続けた。

コロナに翻弄(ほんろう)された経緯は、まず先月29日のPCR検査の結果から。「陽性」と出て、即座に練習拠点のナショナルトレーニングセンターの宿泊所で隔離生活に入った。21日の検査では陰性。その後も外出は控え、練習場との往復しかしていない。「絶対にうそだと思いました。感染経路が不明すぎる」。唐突な宣告に、確信があった。

翌30日に3カ所で再検査の結果全てが陰性となり、結論は「偽陽性」。隔離解除は31日で、「偽陽性は1%か2%だと。その確率引いちゃうんだと」。なんの運命か。嘆き、憤りより、その経験がこう思わせた。「いつもと違う状態で試合に臨むのは、普通じゃないことをいかに普通にやるかが大事になる」。検査に振り回された経験をしたからこそ、「活躍できるか」のヒントを見いだした。その思考回路は内村ならでは。

大会へは外出禁止で、ホテルと会場の往復生活を強いられている。ただ、「それが僕らの仕事」とたくましい。「意外に普通じゃないことを楽しめている自分がいる」とは、精神面の強さも感じさせる。

東京五輪へ6種目から鉄棒に絞り、金メダルを目指している最中。今回は4種目にエントリーし、鉄棒での成功のヒントも探る。「最悪は回避できている。大変とかはこのご時世言ってられないかなというのが答えです」。試合前から、際立つ「強さ」を見た。【阿部健吾】

◆国際大会 大会名は「Friendship and Solidarity Competition(友情と絆の大会)」。4カ国の計30選手を2チームに分け、男女混合の団体戦で実施する。コロナ禍で過剰なまでの対策を敷く。入国にはチャーター機を使う国や、空港、ホテルなどの動線も特別ルートを使用。日本に滞在中は毎日のPCR検査も行う。この日は選手たちの待機場所に空気清浄器を置くなど、会場で実施する対策を報道陣に公開した。