F1日本GP過去の歴史

【1997年10月14日付本紙より】

M・シューマッハーV!逆転王者へ加速

 ◇10月12日◇決勝◇三重・鈴鹿サーキット(一周5・86403キロ)全53周◇参加21台、完走14台◇晴れ◇観衆14万人

 ミハエル・シューマッハー(28=フェラーリ)が、1時間29分48秒446で今季5勝目(通算27勝目)を挙げ、ドライバーズポイント争いで首位ビルヌーブ(26)を1点差まで急追した。最終戦の欧州GP(今月26日決勝、スペイン)で、2年ぶり3度目の年間王座を狙う。ポールポジション(PP)のビルヌーブは5位に沈む完敗。今季限りで引退する片山右京(34)は最後の母国GPで9周目にリタイア、中野信治(26)も完走を逃した。

同僚アーバイン好アシスト「彼のおかげさ」

 日本GP2年ぶりとなる表彰台の頂点。シューマッハーはドイツ国歌が流れても投げキスを繰り返し、帽子を脱ぐのさえ忘れていた。「こんなに大きな喜びを味わう優勝は久しぶりだよ」。逆転の年間王座へ、この鈴鹿は絶対に落とせない。そんな局面で、会心の戦略的勝利を決めた満足感は計り知れない。

 序盤はPPのビルヌーブに遅いペースで前をふさがれた。「ジャック(ビルヌーブ)は必ず守りのレースをする」と読んでいたシューマッハーは、即座に予定の作戦を開始。フェラーリの同僚アーバインと組み、ビルヌーブをつぶしにかかった。

 3周目、アーバインがペースの上がらないビルヌーブを抜き去ってトップを奪う。20周目にビルヌーブがピットインする間に、シューマッハーはすかさず2番手に浮上した。フェラーリの赤い車体が上位に2台に並んだ時点で、勝負は決した。25周目、先頭のアーバインが後ろのシューマッハーだけを故意に前へ出し、後はビルヌーブを完全にガード。わき役アーバインが妨害役に徹する好アシストがきき、シューマッハーは楽々と逃げ切った。

 「アーバインは駆け引きを知っている。彼のおかげさ。相棒にふさわしい男だね」。シューマッハーはウイニングランを終えてマシンから降りると、してやったりの表情で真っ先に殊勲の同僚を抱き締めた

 敗れたビルヌーブは失格騒動が尾を引いた。前日のフリー走行で黄旗を無視した失格問題が、継続審議になっている。後日の審議ではく奪されるかもしれない決勝ポイントを無理に奪うより、「とりあえずシューマッハーを抑えるレースを」と消極策に出たのが裏目。フェラーリ陣営の術中にはまった形だ。

 年間王座争いは1点差。互角のラインに持ち込んだシューマッハーは「最終戦は、だれであろうと前に出た者が勝つ。楽しみだ」。復活した“跳ね馬”は、フェラーリ18年ぶりのドライバー王座をはっきりと意識していた。【織田健途】

 ◆年間王座争い ドライバーズポイントは現時点でビルヌーブが1点上回るが、この日の5位で得た2点は暫定点。11日の黄旗無視行為が後日に国際自動車連盟の国際控訴裁判所(パリ)で審議され、失格となれば2点ははく奪。シューマッハーが1点差で首位に立つ。いずれにしても最終戦は1点をめぐる攻防。ポイントは優勝10点、2位6点、3位4点、4位3点、5位2点、6位1点だが、両者の決戦は互いの順位をにらみながらの展開となる。

(写真・上=表彰台でガッツポーズを見せるM・シューマッハー(AP)。写真・中=優勝したシューマッハー(左)は、鈴鹿を知り尽くした頼れるNo・2のアーバイン(右)の完璧なサポートに、ありがとうとシャンパンを大サービス。写真・下=トップをシューマッハーに譲ったアーバイン(手前)はビルヌーブを抑え、陰の主役となる)


右京最後の鈴鹿わずか14分

 片山の鈴鹿ラストランは、わずか14分あまりで終わった。ピットで応援していた父巖さん(70)も「終わった」とつぶやき悔し涙を流した。マシントラブルだけはどうすることもできない。「完走したかった。もっとファンの前で走っていたかった。感傷に浸るひまもなかったよ」と振り返った。

 レース後、中野から「お疲れさまでした」と声を掛けられた。「ここしかない。今しかない。オレしかない」をモットーに、6年間戦い続けた片山のF1での姿勢は、中野にとって最高のお手本だった。

 F1引退後は11月16日、ツインリンクもてぎ(栃木)で行われるGTオールスターレースに、トヨタカストロールチームから出場することが決まっている。「F1に悔いはないです」という片山の、新たなレーサー人生が始まる。

(写真=6年間の労をねぎらう中嶋悟氏(左)に「最後の日本GPは僕もリタイアしちゃいました」と苦笑いの片山右京)


中野もリタイア

 中野の初の日本GPは、22周リタイアで終わった。来季シート、最終戦出場をアピールするはずが、リアホイールとブレーキのトラブルで、21周目のシケインをコースから外れて突っ切った。それでも破損したマシンのノーズを引きずりながら1周したが、それ以上は走れなかった。ピットに戻っても、立ちつくしてぼう然としていた。「右後輪が外れかけて、ブレーキもダメだった。こんな結果で終わるとは……」とうつむいた。26日決勝の欧州GP出場は未定。来季シートを求めて20日に日本を離れる。

(写真=20周目シケインでオーバーランしダメージを負った中野は、何とかピットを目指すが、後部から白煙を上げて無念のリタイアに終わる)


観衆アップ14万人

 最終日の観衆は、昨年の13万9000人を上回る14万人を記録した。昨年の日本人ドライバーは片山一人だったが、今年は中野も参加。年間王座争いの顔触れも、昨年のヒル対ビルヌーブからシューマッハー対ビルヌーブの若手スター対決に変わったことが盛況につながったとみられる。


順位 ドライバー チーム・エンジン タイヤ タイム
1 M・シューマッハー フェラーリ GY 1時間29分48秒446
2 H−H・フレンツェン ウィリアムズ・ルノー GY 1時間29分49秒824
3 E・アーバイン フェラーリ GY 1時間30分14秒830
4 M・ハッキネン マクラーレン・メルセデス GY 1時間30分15秒575
5 J・アレジ ベネトン・ルノー GY 1時間30分28秒849
6 J・ハーバート ザウバー・ペトロナス GY 1時間30分30秒076
7 G・フィジケラ ジョーダン・プジョー GY 1時間30分45秒271
8 G・ベルガー ベネトン・ルノー GY 1時間30分48秒875
9 R・シューマッハー ジョーダン・プジョー GY 1時間31分10秒482
10 D・クルサード マクラーレン・メルセデス GY 1周遅れ
11 D・ヒル アロウズ・ヤマハ BS 1周遅れ
12 P・ディニス アロウズ・ヤマハ BS 1周遅れ
13 J・フェルスタッペン ティレル・フォード GY 1周遅れ
  T・マルケス ミナルディ・ハート BS 47周目リタイア
  M・サロ ティレル・フォード GY 47周目リタイア
  O・パニス プロスト・無限ホンダ BS 37周目リタイア
  中野信治 プロスト・無限ホンダ BS 22周目リタイア
  片山右京 ミナルディ・ハート BS9周目リタイア
  R・バリチェロ スチュワート・フォード BS 7周目リタイア
  J・マグヌッセン スチュワート・フォード BS 4周目リタイア
  J・ビルヌーブ ウィリアムズ・ルノー GY 失格
1位の平均時速は207・508キロ。
最速ラップはH−H・フレンツェンの1分38秒942(48周目)。
タイヤのGYはグッドイヤー、BSはブリヂストン
◆失格 ビルヌーブは練習走行中の黄旗無視で失格
◆欠場 モルビデリが11日の予選でクラッシュした際に負傷のため、決勝出場を取りやめた。


  nikkansports.comに掲載の記事・写真・カット等の転載を禁じます。
  すべての著作権は日刊スポーツ新聞社に帰属します。