女子400メートル(切断などT47)で辻沙絵(23=日体大大学院)が自らの日本記録を更新する59秒28をマークした。

 「ちょっと、1歩前進できたと思います」。久しぶりに辻ちゃんスマイルが輝いた。16年リオデジャネイロ・パラリンピックで銅メダルを獲得したことでアイドル的人気に火がつき、各種イベントなどに出席する機会が激増。練習に集中できなくなり、自分を見失いそうになったこともある。そんな状況で昨年7月のロンドン世界選手権でも銅メダルを手にしたが、記録は伸び悩んだ。

 「ロンドンではとても不安でした。練習ができていなかったから。もう、あんな思いはしたくない」。昨年から今年にかけてのオフには米国合宿を行い、著名なコーチ、ジョン・スミス氏からペースを落とさない走りを習得。持久力養成メニューにも積極的に取り組み、スタートも障害のある右腕を使わない3点スタートに変更した。一時は競技を離れる決意も固めたというが、今年1月には結婚もして精神的にも落ち着きを取り戻した。

 これまでの記録は16年3月のドバイGPでマークした59秒72。0秒44更新するのに2年4カ月近くかかったが、苦しんだ分だけ喜びも大きい。「できれば今年中に58秒台に入りたい。20年東京までは400をメーンで走ります」。言葉がはずんでいた。