権藤監督、石井琢の唇にデキモノが…優勝争い重圧ピークの9月を乗り越えて/連載14

横浜DeNAベイスターズの25年…四半世紀ぶりの優勝を祈念する企画連載の第14弾は、優勝争いの重圧がピークになった9月の戦いです。鈴木尚典の負傷で幕を開けた勝負の月、ベテラン畠山準の起用、戸叶尚の成長などで勝ち星を重ねていきます。権藤博監督や選手会長の石井琢朗の唇にデキモノができた時期もありましたが、2位中日との直接対決で強さを発揮。いよいよ優勝マジックの点灯が近付いてきました。

プロ野球

鈴木尚を負傷で欠くも

9月は波乱の幕開けになりました。

9月1日の巨人戦(横浜)で、3番鈴木尚典が巨人桑田真澄から左ふくらはぎに死球を受け、ベンチに退きました。翌2日の同戦は欠場。この時点で打率3割3分6厘と、広島前田智徳に次ぐリーグ2位の主軸を欠くというピンチを招きました。

権藤博監督は、不動の1、2番コンビを逆にして「1番波留敏夫、2番石井琢朗」とし、3番にベテラン畠山準を入れました。波留、畠山と右打者が続かないよう配慮したものでした。

ベテラン畠山準

ベテラン畠山準

アクシデント時に好ゲームが出るのは、1998年のベイスターズの特徴です。鈴木尚を欠いた試合もそうでした。

巨人岡島秀樹を相手に序盤から走者を出すもののタイムリーが出ません。

4回、先頭の駒田徳広が安打で出塁すると、続く中根仁は打撃妨害で出塁。さらに敵失で無死満塁のチャンスを作るも、続く進藤達哉が遊ゴロで、併殺の間に1点を取っただけ。苦しい展開が続きました。

しかし、この1点を投手陣が守ります。先発の戸叶尚は巨人の強力打線を相手に連打を許さず、無失点で切り抜けていきます。

この年7勝をマークした戸叶

この年7勝をマークした戸叶

最大の見せ場は7回でした。先頭の松井秀喜に中前打を浴び、この試合初めて無死の走者を背負います。続く4番清原和博にはカウント2―2から5球連続ファウルで粘られました。

苦しい11球目。戸叶が投じたのは115キロのチェンジアップでした。タイミングを外し、二ゴロ併殺に仕留めました。

「緩い球を投げるのは勇気がいります。あの場面で投げられたということは、気持ちで勝っていたということですね」

戸叶は、試合後にそう振り返りました。

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編集委員

飯島智則Tomonori iijima

Kanagawa

1969年(昭44)生まれ。横浜出身。
93年に入社し、プロ野球の横浜(現DeNA)、巨人、大リーグ、NPBなどを担当した。著書「松井秀喜 メジャーにかがやく55番」「イップスは治る!」「イップスの乗り越え方」(企画構成)。
日本イップス協会認定トレーナー、日本スポーツマンシップ協会認定コーチ、スポーツ医学検定2級。流通経大の「ジャーナリスト講座」で学生の指導もしている。