
【箱根駅伝2023あえぐ名門〈11〉】「及第点」を超す次の戦いへ/8,9,10区
早稲田大学競走部は、47回連続92度目となる箱根駅伝を総合6位で終えた。6月にOBの五輪ランナー花田勝彦を監督に迎え、前回大会13位のシード落ちから、指揮官、選手たちはいかに活路を見いだしていったのか。夏から密着してきた大型連載の第11回は、箱根駅伝を終えるまでの復路8、9、10区。「一般組」の伊福陽太(2年)、次期主将に決まっていた菖蒲敦司(3年)、そして希望のゴールを切った菅野雄太(2年)を見つめた。(敬称略)
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【最後に動く順位グラフあります】
「最も走り込んだ漢」量にこだわった練習
間違いなく、カンフル剤だった。
伊福は、花田体制になってからの半年、どれだけ仲間から関心を向けられただろう。
「言われた記憶はあまりないですよ」
箱根のエントリーメンバー入りをした後、本人は控えめに教えてくれた。
ただ、チーム内の「最も走り込んだ漢(おとこ)」の数字を、誰もが気にしていた。
指揮官も、その普段の姿こそ、早稲田の礎に連なっていく欠かせない要素だと感じていた。
「一番走ったのは8月ですね。地元に帰る期間もあったんですが、それを含めると920キロでした」
日割りしても1日30キロ以上。妙高高原での合宿では週に265キロを走り込んだ。
起伏が激しい山道を、与えられたメニュー以上に、1人で駆けた。
距離を踏む。決意の1年間だった。
1年時は、上位グループの練習に参加できず、明確な区分けがあった。
「質でいったら、設定ペースもあっち(上位)の方が早いので、距離が同じでも能力の高い選手の方が質も高い。ある程度割り切っていたので、質が違うのなら、量で差をつけないといけない」
単純だが、覚悟がいる。
「しんどいですけど、しんどいことをやらないと」
立場は明らか。同学年にはスポーツ推薦で入学してきた高校時代の実績十分な、伊藤大志、石塚陽士がいた。
京都・洛南高ではスポーツクラスではなく、学業も重視するクラスで学んでいた。世代のトップランナーではなかった。早稲田への進路は、1学年上の高校の先輩、諸冨湧(3年)が教えてくれた。
「1番大きかったのが、諸冨さんが指定校推薦を使って早稲田に行って、かつ1年目で箱根を走ったこと。スポーツ推薦ではなくても競走部に入れるんだって。そういう道があるならいいなって」
早稲田に可能性を感じた。実際に入学し、全国大会のトップランナーだった同期との実力差も想像はしてきた。
「僕らの代は推薦が少なく、かつ推薦組との差が大きいような立場で、追いつかないといけない。いずれ、自分達が上の学年になった時に、選手層に厚みをもたらす存在にならないといけないなって。入学した時から感じてました」
花田が春先から監督となり、1つのきっかけにもなった。完全別メニューだったポイント練習でも同じグループ分けになり、直接、差を埋める方策を探す意識が増した。
まずは量が全てだった。
練習量の「見える化」が部員の刺激に
花田が監督となって、Web上で管理している練習日誌のツールが変わった。監督だけでなく、選手同士で誰がどんな練習をやっているかが自由に見られるようになったのだ。
「見ますね。全体で、誰がどれくらいで走れたか気にします」
伊福も見る側だったが、ただ、伊福こそ最も見られる側だった。
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阿部健吾Kengo Abe
2008年入社後にスポーツ部(野球以外を担当します)に配属されて15年目。異動ゼロは社内でも珍種です。
どっこい、多様な競技を取材してきた強みを生かし、選手のすごみを横断的に、“特種”な記事を書きたいと奮闘してます。
ツイッターは@KengoAbe_nikkan。二児の父です。
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