【高砂部屋の面々〈2〉】朝乃山上回る朝弁慶のモテ具合 親方衆「ご指名」連発の理由

人と人とのつながりが、平成の時、ましてや昭和の時とは大きく変化している令和の現在-。そんな時代の変化に逆行するように、大相撲の高砂部屋では力士たちが、大家族のような濃密な日常を過ごしている。7月の名古屋場所で番付にしこ名が載る力士は26人と全44部屋で最多。そんな角界一の“大家族”の日常の一部を「高砂部屋の面々」と題し、不定期連載で紹介していく。第2回は、他の部屋の親方衆からもモテモテの朝弁慶。

大相撲

17年2月、部屋での稽古後、ベニズワイガニのはく製を手に笑顔を見せる朝弁慶

17年2月、部屋での稽古後、ベニズワイガニのはく製を手に笑顔を見せる朝弁慶

最高位は十両 幕下・朝弁慶 34歳

朝弁慶大吉(あさべんけい・だいきち)

本名・酒井泰伸。1989年(平元)2月12日、神奈川・平塚市生まれ。五領ケ台高卒業後、大学進学が決まるも「相撲で強くなって親孝行しなさい」と先代高砂親方(元大関朝潮)に説得され、07年春場所初土俵。15年九州場所で新十両。6場所連続で十両を務めたが陥落。その後、2度、再十両昇進。20年名古屋場所を最後に関取から遠ざかっている。家族は母と弟。190センチ、169キロ。

夏場所前、朝乃山(中央左)にぶつかり稽古で胸を出した朝弁慶

夏場所前、朝乃山(中央左)にぶつかり稽古で胸を出した朝弁慶

気付き、自信を与える胸出し「関取養成の達人」

力士を連れて出稽古に来た他の部屋の親方衆が、こぞってうなる力士が、高砂部屋にいる。朝乃山? いえいえ。大関経験者で現在も幕内上位の朝乃山の実力は、皆が知るところ。他の部屋の親方衆が「稽古をつけてやってくれ」と、ことごとくお願いするのが、実は幕下の朝弁慶だ。34歳。伸び盛りの若手ではない。最高位は西十両7枚目で、関取を計8場所務めたベテランだ。

親方衆がほれるのは、ぶつかり稽古での胸出しのうまさだ。やみくもに“かわいがり”をするわけではない。各力士の力量、押す力を瞬時に見抜き、土俵際の最後の一押し、もう一踏ん張りの力を出させたところで、土俵を割る。高砂部屋で最身長の190センチ、体重も三段目朝大洞の183キロに次いで重い169キロ。押し切った力士に自信を植え付けるには、十分すぎるほどの大きな体の持ち主だ。さらに、随所で当たる角度、より力の出る押し方をアドバイスする。

部屋の幕内呼び出し利樹之丞は「関取養成の達人」と称する。事実、朝乃山を筆頭に、現在は幕下に甘んじているが、朝玉勢、朝乃若、朝志雄ら後輩力士が、朝弁慶の胸を借りて関取となった。さらに石崎、深井、長内ら、次の新十両昇進をうかがう幕下力士は多数。現役でありながら、自らの体を使って各力士に“気付き”を与え、成長へとつなげる功績は、名コーチの域に達している。

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1999年入社。現在のスポーツ部ではサッカー(1)→バトル→五輪→相撲(1)→(5年半ほど他部署)→サッカー(2)→相撲(2)→ゴルフと担当。他に写真部、東北総局、広告事業部にも在籍。
よく担当や部署が替わるので、社内でも配った名刺の数はかなり多い部類。
数年前までは食べる量も社内でも上位で、わんこそばだと最高223杯。相撲担当になりたてのころ、厳しくも優しい境川親方(元小結両国)に「遠慮なく、ちゃんこ食っていけ」と言われ、本当に遠慮なく食べ続けていたら、散歩から戻った同親方に「いつまで食ってんだ、バカヤロー!」と怒られたのが懐かしいです。