触れ太鼓に密着 大相撲の呼び出しが継承している伝統文化の美しさ

初場所の触れ太鼓に密着しました。触れ太鼓とは、本場所初日の前日に呼び出しさんたちが太鼓をたたきながら、相撲部屋や商店街を練り歩き、本場所の訪れを告げる伝統行事です。

2024年1月13日、10時間以上にわたり、両国界隈41箇所をまわった「触れ太鼓」の様子をお伝えします。

大相撲

午前は主に相撲部屋

実に風情がありました。トントン、ストトン…、相撲太鼓が街に鳴り響き、呼び出しさんたちが初日の取組を告げて回ります。

江戸時代から続く伝統文化は、呼び出しさんによって受け継がれています。

今回初めて、触れ太鼓に丸一日、密着しました。

現在、日本相撲協会の呼び出しは45人。そのほとんどが、触れ太鼓のために1日を費やします。4班に分かれて、初日の訪れをお知らせしていきます。

今回、私が密着したのは三役呼び出しの吾郎さんを筆頭とする「本所」を回る班。ほかに「浅草」「銀座」「阿佐ヶ谷」に別れて、各班が各所に散らばっていきます。徒歩で回ったり、レンタカーで移動したりと、臨機応変に対応していきます。

「本所」の班は、午前9時半ごろに呼び出しさんたちがレンタカーに乗り込んで国技館を出発。最初の触れ太鼓は、高田川部屋です。

午前9時40分 高田川部屋

竜電、輝ら関取衆は、稽古場で本場所と同じ締め込みを締めていました。いよいよ最終調整です。

高田川部屋の次は、徒歩で大嶽部屋へ。

午前9時47分 大嶽部屋

呼び出しさんが、相撲部屋へ初日に向かう空気感を運びます。

「相撲は明日(みょうにち)から、初日じゃぞ~い」

吾郎さんが、こう切り出すと、呼び出したちは代わる代わる、初日の取組を呼び上げていきます。

「豪ノ山に~は~、大栄翔じゃぞ~え」

「琴ノ若に~は~、阿炎じゃぞ~え」

最後は結び。

「照ノ富士に~は~、宇良じゃぞ~え」

「ご油断で~は~、詰まりますぞ~」

明日から初日、早くしないとチケットなくなるよ、ということを伝統的な言葉使いで告げていく。

王鵬の取組が呼び上げられると、力士全員が拍手をして、関取を盛り立てました。

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スポーツ

佐々木一郎Ichiro Sasaki

Chiba

1996年入社。2023年11月から、日刊スポーツ・プレミアムの3代目編集長。これまでオリンピック、サッカー、大相撲などの取材を担当してきました。 X(旧ツイッター)のアカウント@ichiro_SUMOで、大相撲情報を発信中。著書に「稽古場物語」「関取になれなかった男たち」(いずれもベースボール・マガジン社)があります。