【夏場所こぼれ話 初日~7日目】寺尾の浴衣に反応した節男、玉鷲の締め込みの秘密…

夏場所を取材しました。大きな話題は大の里の優勝と横綱昇進でしたが、紙面やウェブ記事に載らなかった細かな話題もたくさんあります。

「夏場所こぼれ話」と称して、現場で拾ったエピソードを紹介します。まずは、初日から7日目まで。

大相撲

御免札が立つ両国国技館(2025年5月11日撮影)

御免札が立つ両国国技館(2025年5月11日撮影)

初日

午前中から国技館へ。JR両国駅を出て、切符売り場の前を通ると、かつて日刊スポーツで働いていた後輩S氏を発見。外国人観光客をアテンドし、英語で大相撲についての説明をしていた。

記者クラブに荷物を置き、館内を一回り。売店やガチャの商品などにはとても興味があるので、チェックは楽しい。

2階に上がる際、行司の式守風之助さんとすれ違った。一緒にいたお母様を紹介してくれたので、ごあいさつ。後日聞くと、両親が観戦に来ていて、館内を案内しているところだった。この日は母の日。ハンカチを贈ったそうだ。

警備室に行き、湊川親方(元大関貴景勝)にあいさつ。4月25日のトークイベント「豊ノ島の部屋」に出演していただいたお礼をあらためてした。湊川親方の引退相撲チケットは、この日午前10時から販売開始。正午ごろには、マス席S、Aはもう完売していた(6月3日現在、全席完売)。さすがの人気だ。

昼食は国技館内の食堂にて。この食堂は、親方や力士ら協会員のほか、お茶屋さん、売店で働いている皆さん、報道陣などが利用できる。メニューは1日1種類で日替わり(500円)、ご飯は自分で盛り付ける。ランチだけの営業だが、あまり混まないのもいい。初日はカレーライスだった。これが、元祖「国技館カレー」。少しからくてうまい。人気メニューだ。

記者室に戻る途中、「お久しぶりです」と声をかけられて振り向くと、岩友親方(元関脇碧山)がいた。

「妙義龍の振分親方が、引退してから初めてカーナビをセットして行った場所が岩友親方の家だって聞いたんですけど、これ本当ですか?」と聞くと「本当です。でも、その時、いなかったんで…」。

ちなみに岩友親方は、18歳の時にブルガリアで運転免許を取得。親方になってから日本でも運転しているという。「右側と左側が違うので最初は怖かったけど、もう慣れました」。

今場所から、懸賞袋の中身が3万円から1万円になった(差額は振り込み)。さほど影響ないかもしれないが、取材にあたり、幕内力士に反応を聞くことを同僚と申し合わせた。

本場所前、母の日に絡めた記事を書かせてもらった大栄翔関には、「お母さんに何か贈りました?」と聞いた。プリザーブドフラワーを贈ったそうだ。

初めて本場所で弓取り式を務めた天空海さんは、結びの独特の空気感に感激していた。この体格での弓取りは、とても重厚感がある。天空海さんは2日目以降も、必ず支度部屋で弓を持って慎重に準備しながら本番に臨んでいた。

弓取り式を務める天空海(2025年5月11日撮影)

弓取り式を務める天空海(2025年5月11日撮影)

朝日新聞社のN氏が、同社記者の皆さんに崎陽軒のシウマイ弁当を差し入れ。その差し入れのお裾分けをいただいた。

2日目

序ノ口から取材。

若い行司さんを監督している木村元基さんが、溜まり席にいた。お客さんの座布団をよけ、背筋を伸ばして硬い床に正座している。この様子は、ABEMA大相撲LIVEに映り込んでいるため、一部ファンの間ではよく知られている。お客さんの席を乱したくないという、実直な元基さんらしい振る舞いでもある。

若手行司の監督を務めている木村元基(手前)(2025年5月12日撮影)

若手行司の監督を務めている木村元基(手前)(2025年5月12日撮影)

序ノ口で注目したのは、今田対山野邊。ともに今場所が序ノ口デビューとなった2人で、今田さんは元横綱鶴竜の音羽山部屋。山野邊さんは31代横綱常ノ花のやしゃご(ひ孫の子)。勝った今田さんに話を聞いた。

寺尾の浴衣を着た今田

寺尾の浴衣を着た今田

今田さんは元幕内安芸乃州の長男で、ネバダ州立大で宇宙工学を専攻した変わり種。渡米前、「光星」の名付け親でもある先代錣山親方(元関脇寺尾)に報告にいくと「お前がまわしを着けている姿をみたかったんだけどな」と言われた。この言葉が心に残っていて、のちに角界入りにつながっている。この日は、「寺尾」の文字が入った浴衣を着ていた。

すると、通りかかった錣山部屋の呼び出し節男さんが「これ、オヤジの?」とうれしそうに声をかけていた。「オヤジ」って言うところがいい。

夏場所に合わせて散髪した呼び出し大将

夏場所に合わせて散髪した呼び出し大将

呼び出しの大将さんともすれ違った。髪を短く整えていた。「本場所前の木金土のどこかで切ります。部屋の近所で、『いつものお願いします』でいけます」。

昼食時、記者室ではベースボール・マガジン社のK氏が「豊昇龍弁当」を食べていた。綱を締めた写真のパッケージは、今場所から発売なんだとか。こういう細かい気づきはK氏ならでは。

引退相撲のポスターを持つ振分親方(元関脇妙義龍)

引退相撲のポスターを持つ振分親方(元関脇妙義龍)

警備室を訪ねて、振分親方(元関脇妙義龍)を取材。引退相撲について聞いた。「自宅から部屋まで自転車通勤してますが、豆腐屋、うどん屋、肉屋、ふとん屋、魚屋、酒屋の前を通りながら、あいさつしてます。郵便局やクリーニング屋も、自分が使うところはみんな、(引退相撲を)応援してくれて声をかけてくれる。今日はハトヤ豆腐店のところてんとおぼろ豆腐を食べてから来た。最高でしょ?」。最高です。

NHK戸部アナウンサーと支度部屋近くで久しぶりに会った。福岡局に転勤になったため、本場所は千秋楽まで通しでいられるとのこと。

昼食は、またも食堂へ。2日目はシャケとコロッケ。

記者室で、宮城野親方(元横綱白鵬)と一緒に炎鵬戦をモニターで見た。完勝を喜ぶ親方。懸賞金にまつわるエピソードも聞いた。雑談もした。「私が言うことではありませんが、親方には協会をやめてほしくないです」ともお伝えした。

濱豊(奥)を押し出しで下した炎鵬(2025年5月12日撮影)

濱豊(奥)を押し出しで下した炎鵬(2025年5月12日撮影)

支度部屋では、一等床山の床仁さんから声をかけられ、新聞業界の苦境について話した。「ウチの部屋(荒汐部屋)にいくと、新聞が置いてある。誰も読まないけど、自分は読みますよ。毎日読む。ウチの部屋は、日刊スポーツを取ってるんですよ」。おお、ありがたい! でも書いてあることなどを聞いているうちに、それは日刊スポーツではなく、他紙のような気がした。

打ち出し後、電光掲示板を取り替える作業者(2025年5月12日撮影)

打ち出し後、電光掲示板を取り替える作業者(2025年5月12日撮影)

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スポーツ

佐々木一郎Ichiro Sasaki

Chiba

1996年入社。特別編集委員室所属。これまでオリンピック、サッカー、大相撲などの取材を担当してきました。X(旧ツイッター)のアカウント@ichiro_SUMOで大相撲情報を発信中。著書に「稽古場物語」「関取になれなかった男たち」(いずれもベースボール・マガジン社)があります。