【名古屋場所こぼれ話 8日目~千秋楽】怖い話=付け人が対戦相手の浴衣を着てきた
名古屋場所が終わりました。現地取材の裏側、新聞やウェブに書き切れなかったことなど、「名古屋場所こぼれ話」としてお送りします。
中日8日目から千秋楽までの様子をお届けします。
大相撲
中日8日目
朝から支度部屋のイラストに取りかかり、完成させた。東の支度部屋に行き、明け荷の位置を確認。実際に関取が来ると位置取りが変わる時も多いので、再確認しながら完成させた。
新会場は、こういう企画も成り立つので楽しい。
イラストは手描きのため、スキャンをする必要がある。そのため、IGアリーナを出てローソンまで往復した。
午後3時半、力士らの関係者入口が慌ただしくなっていた。何が起きたのか聞いてみると、霧島関の化粧まわしがなく、急きょ音羽山部屋から届けてもらっているところだという。幕内土俵入りまであと10分。大丈夫なのか?
西の支度部屋をのぞく。周囲の力士たちはみな、事情を分かっているようで、ざわついていた。間に合わなかった時に備えて、霧島関は十両大青山関の化粧まわしをつけていたが、ギリギリで間に合った。
ああ、これは付け人が怒られるだろうな。
各所で事情を聴くと、若い衆同士の意思疎通が十分でなかったことが原因であることが分かった。ひとまず間に合って何より。
幕内は西の支度部屋を取材。
休場していた英乃海関がこの日から再出場。事情を聴いた。
阿炎関の話。玉鷲関に敗れ、相手のすごさをたたえていた。その時、テレビモニターには、高安-若元春戦が映っていた。左四つで胸を合わせた状態から勝った高安関の対応に感心していた。
土俵入り前にハプニングがあった霧島関は勝った。一息ついた後、自らドタバタ劇のことを口にしていた。
結びの一番では、大の里関が敗れて金星配給。
横綱は珍しい浴衣を着ていた。「天龍」や「麒麟児」と書かれている。昔の二所ノ関部屋の反物のようだ。
打ち出し後、世話人の勇輝さんが「横綱が負けたのは、あれがあったからじゃないかな。あの時、1人だけ笑ってなかったから」とつぶやいた。「あれ」とは、化粧まわしで混乱が生じた件のこと。大の里関は西の支度部屋で、一部始終を見ていた。本当のところは本人しか分からないが、音羽山部屋所属の1人として、勇輝さんは責任を感じているようでもあった。
9日目
私は休み。夏場所こぼれ話にも書いたが、近年は本場所中でも休みを入れる。15日間連勤は、当社としてNG。他社の状況を聞いても、休みなしで本場所を乗り切る記者はごく少数だ。
朝、コメダ珈琲でモーニング。コメダは何紙もの新聞が読めるので、新聞記者としてはありがたい。
中日スポーツに貴重な情報が載っていた。世話人らが食べている仕出し弁当は、三段目格行司・木村成将さんの父が営む「八百善 多志満」に注文しているものだという。ありがたい情報だ。
夜は某サウナへ。水風呂に入っていると、力士4人が来たのであいさつ。ホテルへの帰り道、街に出ていたある関取にも遭遇した。
10日目
サブアリーナで取材。元十両大成道の笹山喜悌さんが、「りきし~る」のスタッフとして働いている。昨年9月の引退後からのことなどを聞いた。最も印象に残ったエピソードは、笹山さんが現役時代、誕生日に師匠の木瀬親方(元幕内肥後ノ海)から電話が来たという話。電話越しにバースデーソングを歌ってくれたのだという。
前日の支度部屋で、霧島関が中剃りをしていることに気づいた。ほかに中剃りをしている関取がいないか取材。荒篤山関も中剃りをしていたことが判明した。
午前11時10分、弁当の到着時間に合わせて関係者入口に出向き、翌11日目から千秋楽までの弁当を注文した。終盤に入り、ようやく新会場でのランチの最適解を見つけた気がする。
この日はまだ弁当が間に合わないので、会場を出てケンタッキーフライドチキン。
何人かの床山さんに、これまで中剃りしていた力士のことを聞いた。
東西の花道を下がり、細い通路を通った先には、NHK花道リポート用のモニターがある。このあたりはスペースがあるため、力士たちが最後の準備運動をしていることもある。
モニターを見ていると、大喜翔さんから「割、みせてもらってもいいですか?」と声をかけられた。「割」とは、取組表のこと。自分の出番まで、あと何番なのかを確認したかったようだ。私のノートに張ってある割を見ると「よし、これで勝ちました」と謎の勝利宣言。
取組を注目して見ていると、本当に勝った。引き上げてくる大喜翔さんに声をかけると「毎回、ここにいてください」とお願いされた。ゲン担ぎのためなら、喜んで協力したい。
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1996年入社。特別編集委員室所属。これまでオリンピック、サッカー、大相撲などの取材を担当してきました。X(旧ツイッター)のアカウント@ichiro_SUMOで大相撲情報を発信中。著書に「稽古場物語」「関取になれなかった男たち」(いずれもベースボール・マガジン社)があります。
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