オランダMFデヨングが、異質な存在感を放っていた。守備的な中盤の選手では、いないレベルの速さでボールを前に運んでいく。

前半20分が印象的だ。自陣ペナルティーアーク外からドリブルを開始。相手ペナルティーエリア付近まで約40メートルを独力で持ち上がってチャンスを演出した。

後半39分には敵陣中央の左からピンポイントの浮き球でガクポの決勝点をアシストした。ドリブルもパスもある。日本人にはいないタイプのハイブリッドな選手だと感じた。

日本人の中盤は守備、パスなど一分野を得意とする選手が多い。自陣の低い位置でドリブルは、失ったら即ピンチになるから、チーム戦術の中で、なかなかリスクを許容されない。だかリスクを背負った分だけ、リターンも大きい。ドリブルで相手の守備布陣を崩しにかかれば得点機が格段に増える。

この試合のデヨングも、何度か自陣でボールを失う場面もあったが、失敗を恐れてチャレンジをやめるそぶりはない。

私も現役時代、パサーに見られることが多かったが、中盤で一瞬で入れ替わって局面を変えるプレーを武器にしていた。相手はそこを警戒するため、余裕を持ってピッチを見渡すことができた。良質なパスにもつながった実感がある。

世界との“違い”で言えば、日本の教育の場からつながっている。ギリシャ、ノルウェー、アメリカでの生活を振り返っても、チャレンジを奨励する。抑制的で「習い事」という感覚は日本独特の文化だった。失敗を恐れてリスクをとらないサッカーの1つ1つの選択に影響を与えている可能性は大いにある。(小林大悟=元プロサッカー選手、元日本代表MF)

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今回のコラムでは、センターラインのスペシャリストに注目したい。海外進出した日本人では、サイドアタッカーや攻撃的MFのスペシャリストは存在した。海外のビッグクラブでも主力として存在感を示した。だか、中盤の低い位置から状況を変えられる世界レベルの選手はいなかった。

なぜか? どうすれば生まれるのか? どこに違いがあるのか? 今回のW杯で世界最高峰の選手のプレーから自分なりの答えを探っていきたい。

先制ゴールをアシストしたオランダMFデヨング(奥)はゴールを決めたハクポを祝福(ロイター)
先制ゴールをアシストしたオランダMFデヨング(奥)はゴールを決めたハクポを祝福(ロイター)