コロナの影響をモロに受けているスポーツ界ではありますが、フットボール業界においての1月はシーズン中の移籍が許されるタイミングです。基本的には補強がメインにはなりますが、そのような中、スペインのバルセロナでスキャンダルとも言える話が飛び出しました。現地の報道によると、バルセロナはメッシに4年で5億5500万ユーロ(約680億円)を支払う契約を交わしていたということで、契約書のコピーともいえる画像が出回るほどでした(その契約書の画像が本物かどうかはわかりません)。

一方で、クラブ自体に12億ユーロ(約1500億円)という大きな額の負債が存在することもリークされています。クラブ経営を揺るがすレベルの内容で、一体どうなっているのか?という数字の大きさです。ファン離れも不安視されるレベルではありますが、考えられるのは反メッシ派によるリークであることは想像できます(ヨーロッパではチーム内の反発派が体制を変えようとするときに起こすアクションとしてよくあることとされています)。そもそも昨夏のシーズン前にメッシを売却していれば800億円近くになったわけで、本当に買い手があったのかどうかは分からないものの、契約を引き伸ばすことが多額の負債処理に当てられるどころか、取り返しのつかないレベルの出費になってしまった可能性もあります。

しかし、このレベルの“借金”がどのようにして出来上がってしまったのかという部分が気になります。現地からの情報を読み解くと、実に19ものクラブに借金があります。リバプールに対して支払わなければならない金額は約2500万ポンド(約35億5000万円)とありました。バルセロナが2017年にリバプールから獲得したブラジル代表MFのコウチーニョですが、彼の移籍金が1億4200万ポンド(約200億円強)。1億500万ポンド(約149億円)が頭金として先に支払われており、残りの3700万ポンド(約50億円強)を分割払いで後日支払うという契約になっていたようです。しかし、その3700万ポンドのうちの約2500万ポンド(約30億円強)が未払いの状態であったようです。その他にもフランスのボルドーやオランダのアヤックスにも同様の形での大きな額の未払い金があったことがリークされたことで表にでてしまいました。債務でしかないわけなのですが、このコロナでの資金繰りの悪さにより露呈した問題とも言えそうです。

2000年頃、実はレアル・マドリードにも大借金がありました。その額は2億5000万ユーロ(当時のレートで約250億円強)。決算で隠蔽されていた借金も合わせると全部で400億円近くの借金だったと聞いています。さらに銀行への利息の支払いだけで7000万ユーロ(当時のレートで約70億円強)もあったとされており、まさに借金地獄。そのクラブの会長に就任し、大改革を行ってこの負債対応をしたのが現会長のペレス会長なのですが、当時はマドリード市内の真ん中にあった練習場を郊外に移すことで一等地を売却し、一気に借金を帳消しにしました。更に一部そこで得た資金をフィーゴなどの大物選手獲得に投下することでお金を回すことに成功し、その流れでスター軍団に仕上げたという歴史があります。

バルセロナの借金の原因は当時のレアル・マドリードと同じで選手の移籍金の分割払いによる自転車操業状態が原因です。しかし、今回は、以前レアル・マドリードが行ったような一発逆転ホームランがどのようなことになるのかは、正直なところ想像がつきません。この世界中の経済を負の連鎖に巻き込んでいるウイルスではありますが、結局のところ、バルセロナが不動産ビジネスでこの負債を埋めるとも想像がつきにくく、唯一の解決策は中東や中国、ロシアを中心とした国々のビッグマネーに頼ることでしかないのでしょうか。この危機の乗り切り方に一つ注目がなされそうです。【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)