今週はまだまだ激動のバルセロナです。生え抜きの目玉選手であったスーパースター・メッシのまさかのフリー移籍に始まり、隠されていた1000億円近いとも言われる負債の隠蔽。2000年代に入りUEFAチャンピオンズリーグを4度も制覇するなど黄金時代の裏側で行われていた杜撰経営が、昨年明るみに出ました。そのような状況においても選手補強が次々と行われており、この夏もアンドレアス・クリステンセン、フランク・ケシエ、ハフィーニャの獲得を次々と発表しています。ありとあらゆる手を尽くしてチームの戦力を整えつつ、当然選んではいるものの、どんな選手が来てもサッカーのスタイルが変わらないところは歴史を感じさせます。

総額12億ユーロ(約1680億円)の負債を抱え、その中でも短期的な負債においては7億3000万ユーロ(約1022億円)という数字が発表されました。そもそもなぜこのような巨額な赤字を抱えていたのか。現地の報道などをまとめると、2017年が鍵になるようでした。クラブがメッシと結んだ2017年からの4年契約では、年俸+インセンティブで約1億3800万ユーロ(193億2000万円)という巨額なもので、さらにボーナスによるインセンティブが付随していたとありました。現地報道筋によると、1つは契約延長ボーナスとされており、1億2000万ユーロ前後の額のインセンティブ。そしてもう1つは”忠誠心ボーナス”というような名目になっているようで、こちらが約8000万ユーロとのこと。つまりインセンティブだけでも合計で2億ユーロ、300億円弱にもなる支払い契約が存在していたということになり、給与と合わせるとこれだけでも500億円近くになります。

実は2000年に入る直前のレアル・マドリードは同じような状況であったと聞きました。額の大きさに違いはありますが、選手との巨額の契約が先行してしまい、いざ勝てなくなると支払額だけが残り、気がつけばそれが大きく膨れ上がり、勝てないが故に収入が追いつかない状況に陥ってしまうという悪循環でした。

2010-11シーズンあたりは無双状態でしたが2014−15シーズンを最後にバルセロナがCLで勝ち切れなくなり、収入がついて来ませんでした。2013-14シーズンから導入されたリーガのサラリーキャップ(収入に対し人件費等の上限を定める)とも関連があるように感じます。ライバルのレアル・マドリードは2015-16年からCL3連覇を含む大躍進。賞金額の大きな大会での勝利を優先させたその戦略がモロにハマったといっても良いでしょう。

バルセロナはこの夏にも多くの選手を獲得し、一方では選手の減俸を要求しているという状況で、さらに選手を減らすか給与を減らさないと登録すらできなくなるというような事態に陥っており、まさにそれは自転車操業と言っても過言ではありません。

スポンサーを楽天からSportifyに変更し、胸スポンサー収入を年間約72億円から115億円近くに増加。さらに保有する小会社の株式49.9%とラ・リーガのテレビ放映権の一部を売却し約450億円近くの資金調達に成功したとありましたが、当然大半は負債処理に回さなければならず、しばらくは借金返済に追われることになります。

そもそもここまで選手獲得が必要な理由は一体どこにあるのか? 一番の強みである選手育成が機能しなくなってしまっていることが問題なのではないかという意見もあるようで、ラ・マシア(バルセロナの育成組織の総称)の崩壊が全てを物語っているとも言われております。とにかく下部組織の選手がどんどん外部に流出しており、歯止めが効きません。

バルセロナのラポルタ会長は、サラリーキャップにも邪魔されていると苦言を呈しています。この課題に対してどのような戦略を持って対応していくのか。リーガを巻き込んだ話となっています。新シーズンの開幕は約1ヶ月後になりますが、魅力的なリーガの模索は続くようです。【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」