バルセロナは、サラリーキャップの影響を受け、2021年に生え抜きスーパースターであったメッシとの再契約を結ぶことができませんでした。さらに2020-21シーズンにおける会計では4億8100万ユーロ(当時のレートで約619億円)の損失を発表しました。スーパースターを失っただけでなくコロナ禍も重なり、そして貴重な収入源でもある欧州チャンピオンズリーグでも勝てず、未だ再建の道筋は見込めていません。改めての損失が、少し前に発表された額の3倍近い13億5000万ユーロ(当時のレートで約1737億円)であることを再発表するなど、想像以上に「不健康」な状態であることが発覚。まさににっちもさっちも行かない現状で、スポンサーを楽天からSpotifyに変更し、さらに放映権などの一部の権利を手放すことで現金を作り出すも、厳しい状態には変わりありません。

さらにここに来てクラブの2000億円弱の負債に加えて、他ヨーロッパクラブに“借金”があることもリークされました。その借金総額は1億5150万ユーロもあると報じられており、本日の時点での換算では約215億円近くもの大金になります。(単純に選手獲得時に約束した移籍金が支払われていないということなのですが、そもそも借金クラブで支払うことができない中獲得したということでした・・・)。加えて、現地で報じられたのは、スペイン代表の若手主力選手ガビの登録が認められないという、大きな戦力ダウン。さらにさらに、新エースであるアンス・ファティの売却が報じられるなどまさに背水の陣。一体なぜお金がないのに契約がどんどん進められるのか不思議でもありますが、ここまでリーガを牽引してきたバルセロナがまさに大ピンチです。

バルセロナと自身の方針に頭を悩ませているのが現リーガ会長のテバス氏です。リーガをより健全なリーグにし、魅力的なコンテンツにすべく立ち上がったのが2013-14シーズン。気がつけば10年間近く経過していますが、その功績は非常に大きいのは確かです。しかし、リーガが始まって以来1度も2部リーグに降格経験がなく世界的に名をはせている2大クラブ、バルセロナとレアル・マドリードはこのテバス氏の方針には反対の立場をとっています。実際のところ2クラブによる稼ぎがリーグに大きく吸い取られ、獲得選手に制限がなされる状況です。さらに大きな資本をバックにつける他国リーグとの差は広まるばかりで、テバス氏の現方針ではリーガのクラブが他国に対抗しにくくなりそうな状況には当然納得するわけがありません。こういった背景などからも2クラブはリーガとは敵対関係にあるわけなのですが、その中でバルセロナが想像を超える負債金額を抱え込んだ債務超過状態にあり、さらにこれが隠されていたとなればテバス氏の沈黙も理解できます。

本当かどうか疑わしき審判買収のスキャンダルも報道されるなど、どうにもならない状態のバルセロナを擁護するのか、それとも自身の政策を遂行すべくそのバルセロナを見捨てるのか、この判断はとても難しいものになります。

勝てなくてもじっくり若手を発掘して育て、まさにそれが花開いているレアル・マドリードと、対照的に負のサイクルに陥ったバルセロナ。テバス氏に突きつけられたバルセロナを救うか捨てるかという究極とも言える選択は、今後のリーガの行方を大きく左右します。バルセロナが復権の道をたどるのか、それとも一部で報じられているような2部降格ということもあるのか、注目です。

【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)