Jリーグが26日に開幕する。昨季からのコロナ禍で過密日程は続く。一部地域で緊急事態宣言が出ていることもあり、60人以上の外国人選手が来日できず、開幕には間に合わない。昨季降格なしだったこともあり、今季は通例の2チームではなく4チームが降格。本紙評論家のセルジオ越後氏は戦いの変化などを考察。昨季独走優勝した川崎フロンターレの連覇は厳しいなどと、今季を展望した。

セルジオ越後氏(2015年12月15日撮影)
セルジオ越後氏(2015年12月15日撮影)

(1)シーズン前半戦

今季もあまり高いレベルの戦いは期待できないな。最も大きな理由は、まだ外国人選手が来日できていないこと。政府の方針なので仕方ないが、ビザのある外国籍選手は来日できて、ビザのない新外国人選手は足止め。政府とうまく掛け合うことが必要だったが、Jリーグ執行部の交渉能力の低さが、リーグのレベルを落としてしまうね。

チームの主力となる外国人選手が、実戦に投入されるのは、早くても4月に入ってから。6、7試合は不十分な戦力での戦いを余儀なくされるだろう。ようやくチームになじむのは10試合を過ぎたあたりか。この勝ち点30のかかる前半戦をどう乗り切るかが最初の関門になるな。

オフは国内の移籍が活発だった。決してリーグが活性化したからではない。各クラブの予算が大きく削られ、年俸の高い主力選手を放出しなければ、運営できないほど、財政面が悪化したからだ。クラブに金銭面の余裕がないため、シーズン途中での新たな補強は難しい。だからこそ前半戦が大事で、出遅れたチームが挽回するのは難しいだろうね。

来日できていない主なJ1の外国人選手
来日できていない主なJ1の外国人選手

(2)4チーム降格

通常の2チーム降格のシーズンなら、中盤から下位6チームくらいまでは極端に守備的な戦術を選択することが多い。無理して勝ち点を失うより、守りを固めてコツコツと勝ち点を1でも重ねた方が、残留する可能性が高いからだ。しかし、今季は半数以上のチームが、シーズン中盤からは守備重視の戦術を選ぶ可能性がある。おそらく7位以下のクラブまで残り5試合まで降格の可能性を残すことが考えられる。多くのスタジアムでつまらない試合が展開されるだろうな。

(3)川崎Fの独走

昨季のようにはいかないだろうね。今季は各チームが、チャンピオンの川崎Fに向かってくる。プレミアリーグのリバプールも圧倒的な強さで昨季優勝したが、今季はメンバーが変わらないのに3連敗。失点も多く、苦しいシーズンを送っている。ちょっとした気負いや、気の緩みで勝ち点を奪われることもあるだろうな。

東京オリンピック(五輪)やワールドカップ(W杯)予選に加え、ACLもあり、今季も過密日程になる。毎シーズンのことでもあるが、昨季もACLに出場したチームがそろってリーグ戦で崩れた。日程面でも厳しかったが、コロナ禍による移動の負担も大きかった。今季も同様で、独走どころか、来季のACL出場圏内の順位を確保するのも簡単ではないだろうね。

(4)入場者数制限

今季も入場者数の制限は続く。クラブの財政を苦しめる原因でもあるが、最も怖いのは、コロナ禍が収束したとき、ファンがまたスタジアムに戻ってくるかということ。コロナ禍であまりスタジアムに行かない習慣がついた。サッカー離れの危険性もある。今季は日本サッカーの将来がかかる、とても大事な1年になるだろうな。そのためにはスター選手が必要だが、現状は引退した中村憲剛氏や内田篤人氏の方が好感度が高い。このままなら、将来は厳しいよ。

(5)若手の躍進

ヘタフェMF久保建英ら、所属チームで出番が少ない欧州組が多い現状なら、Jリーガーにも東京五輪メンバー入りの可能性が出てくる。昨季に続く5人交代で、多くの若手が出場機会をもらえるはず。川崎FのMF三笘薫が大きく躍進したように、多くの若手がチャンスをものにして、リーグの未来に光をともしてほしいね。(日刊スポーツ評論家)