あきれて言葉を失った。本紙評論家のセルジオ越後氏(76)は、サブメンバー中心の前半のふがいない戦いに開いた口がふさがらなかった。引いて守る相手に単調な攻撃で突破口を見いだせず、1対1の競争にも勝てずに先制点を許す展開。後半DF吉田麻也の得点で1-1に追い付いたが結局、逆転はできなかった。今後の世界とは守備的な戦いとなり、楽しいサッカーは期待薄と予想した。

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「W杯へのサバイバル」と言うけれど、前半試したサブ組は全員アウトだね。生き残りをかけた戦いと位置づけるなら全滅だな。点が入るまでは相手も攻めに出たけれど、点が入ってからは引きっぱなし。その相手にワンパターンの攻撃をずっと仕掛けても点を決められない。引いて守るアジア相手の戦いで、これまでも苦しめられた悪循環から脱皮できなかったね。1対1で勝てないのは痛いね。

前半は、ベトナム相手に球際で勝てなかった。久保と三笘の両翼がスピードで抜けなかったし、DF吉田が中盤まで上がる場面もあったが、前線で行き詰まる展開は変わらない。森保監督はオーストラリア戦の後「みんなレベルが高い」とサブ組を試すことを明言したが、これでレギュラーとサブ組の力の差がハッキリしたね。みんながレベルが高いわけじゃなかったな。

後半、相手の足が止まり、伊東らレギュラー組が出て、少し楽になったけれど、それなら最初からレギュラーを出せばよかったよ。レギュラー組を後半の早いタイミングで出すくらいなら、前半にベストメンバーを出して相手をたたいておいて、後半にサブ組をどんどん出して試した方が効率的だったね。

これからは相手がアジアではなく、世界になる。今後はベトナムの戦いを逆に日本がやらないといけない。日本は相手が攻めてくれた方が戦いやすい。これまでのように楽しいサッカーではないかもしれないけれど、耐えて耐えて1発を狙うサッカーで勝つことはできる。北マケドニアがイタリアに勝てたように、W杯で日本も強国に勝つことはできる。7大会連続で積まれた経験の上積みはできないかもしれないけれど、勝利を届けることは不可能ではない。寂しい話だけどね。(日刊スポーツ評論家)

日本対ベトナム 前半、シュートを止められる上田(撮影・江口和貴)
日本対ベトナム 前半、シュートを止められる上田(撮影・江口和貴)
日本対ベトナム ベトナムと引き分け、肩を落とす吉田(左)と山根(撮影・江口和貴)
日本対ベトナム ベトナムと引き分け、肩を落とす吉田(左)と山根(撮影・江口和貴)