国際Aマッチ日本人最多出場のMF遠藤保仁(38=ガンバ大阪)は、世界相手にパスで多くのゴールを演出してきた。「出し手」としてFWへあうんの呼吸で届ける究極のパスを今も求めている。

 ゴール前、1本のパスがFWに通らない時、遠藤は感じていた。「世界と戦う時には(パスが)『そこ』じゃないと(得点に)届かない」。周囲は簡単に「パスミスだった」と言う。だが、世界の屈強なDF、GKからゴールを奪うには相手がギリギリ届かないような「そこ」を出し手、FWともに突き詰めることが必要だと考える。

 「世界相手だと紙一重のところに出さないと(点に)届かない。その意識は持つようにしてきたし、忘れないようにプレーすることを心掛けてきた」

 プロ生活の21年間、ずっとJリーグで戦い続けてきた。代表でも日本人最多の152試合に出場。日本と世界、両方のレベルをよく知る男の1人だ。その遠藤が日本の得点力向上のために課題に掲げるのは、精度。好機に持ち込むまでの1本のパス、シュートをどこまで正確に相手に奪われない場所に送れているかが重要だという。

 「世界のリーグではGK、DF陣もトップレベル。日頃の練習から簡単にシュートは打たせてもらえない。点を奪うために自然と要求が高くなっていく」

 一方でJリーグではゴール前でトラップし、ダイレクトプレーが少ないのが現状。

 「世界は全ての面でギリギリのところを狙わないといけない必然性が出てくる。FWのいい動きだしと出し手のタイミングが合わないと得点に結びつかない」

 練習からDFが届かない数センチ単位の精度をFWも出し手も追求しきれていない。だから遠藤が「世界レベル」を目指して出したパスもミスとして流される。

 特に世界との差を感じるのは「クロス」だという。FWが触りやすいところは相手のDFも守りやすい場合もある。「向こう(世界)では、たとえ届かなくても紙一重のところにクロスを出す選手が多い」。相手のプレッシャーに耐えつつ、体勢を崩しながらでも正確なクロスを送れる出し手、ピンポイントで飛び込めるFW。一方で正確なクロスを上げさせないように守備をするDF、ピンポイントのFWの飛び込みをはね返せるDF。それら全てが練習からそろえば、得点力が向上すると考えている。

 38歳になった今も究極のパスを求める姿勢は変わらない。「FWがダイレクトで打てれば一番いい。(1本のパスで)GKとの1対1になる状況になるのが一番」。基準は世界に通用するギリギリでの戦い。1本のパスには日本サッカーの発展を願うメッセージが込められている。【小杉舞】(おわり)